旭川市大雪クリスタルホール自主文化事業コンサートガイド

『Concierge(コンシェルジュ)』第29号(2007/3/19)掲載

「ホワイエで発見〜クラシック音楽のメッセンジャー〜にアタック!」

 

大雪クリスタルホールのホールメートの皆様に送付されているガイドに,私のコメントが掲載されましたので紹介いたします。

 

 

 ラジオを友として青春時代を過ごされた方は,ホールメイトの皆さんの中にもたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。遠い記憶では,その放送時間を待ちこがれた「君の名は」,「赤胴鈴之助」といった連続ドラマ番組から始まり,やがて,高度経済成長,学生運動,受験戦争盛んな時代には昼間の躍動感とは裏腹に,夜には孤独と不安が必ず押し寄せ,この時間を癒してくれたのが「オールナイトニッポン」であったり,また,エレガントな雰囲気を醸しだす「ジェットストリーム」や「ラジオ深夜便」に明日への安らぎと深い眠りを誘われてみたり…。

 ラジオは,流れ来る音楽とパーソナリティの語りによって,聴く人それぞれが現実と想像の世界を往復し,その時々の自分史を刻む手助けをしてくれる伴奏者(アカンパニスト)のようなものではないでしょうか。

 ところで,旭川にも,地元ラジオ番組で,様々な分野から市民に語りかけ,問いかけをしているパーソナリティがいます。FMりべーるで日曜日の毎朝9時から放送されている「クラシックにくびったけ」という1時間番組を担当されている浅利豪さんもその一人。番組の中で自主文化事業のPRもお願いしています。

 その浅利さんが昨年12月1日の「アリス=紗良・オット&オーケストラ・アンサンブル金沢ストリング・カルテット」ばかりでなく,1月17日の「コンチェルト・コペンハーゲン」も鑑賞していただいたことをキャッチ。すかさず,インタビューにご協力願うこととしました。

 

【クリスタルホール】

こんにちは。浅利さんのように市内で有数のクラシックファン,というよりはその道の専門家といえる方からお話を伺う機会を持つことができて光栄です。また自主文化事業公演を鑑賞していただきありがとうございます。その感想は後ほどにして,簡単に自己紹介をお願いします。

 

【浅利】

よろしくお願いします。そもそも私はクラシック音楽の専門家ではなく,クラシック音楽をこよなく愛する一市民でありまして,あえて言うならば愛好家です。もともと,FMりべーるにはクラシック番組がなく,コミュニティ放送局としてクラシック番組を自主放送していたというお話をお聞きし,ボランティアで「クラシックくびったけ」という番組のパーソナリティを担当させていただき,早2年になります。

 

【クリスタルホール】

浅利さんは覚えていらっしゃらないと思いますが,実は,浅利さんとは6年ほど前に,ナイターで草野球対戦をしています。私のチームは結成間もない“おやじチーム”。敵チームの浅利さんはエースで剛速球を投げていました。野球歴も豊富とお見受けしましたが…。

 

【浅利】

もちろん,覚えております。クラシック音楽同様,昔から野球が好きで,職場の草野球チームに入れていただいております。学生時代に野球をやっており,そのほとんどはピッチャーをしていて,全盛期には,130キロを超える直球も投げられたのですが,対戦した頃は,既に「昔とった杵柄(きねづか)」程度で,最近は肩も上がらなくなってきて,見るも無惨な状態です…()

 

【クリスタルホール】

やはりそうでしたか。対戦すること自体ミスマッチ。うちのチームに打てる訳がありません。ところで,柔と剛といった感じのする音楽と野球ですが,何か接点とか調和とかあるのですか。

 

【浅利】

確かに野球に通じるものがあるかもしれません。クラシック音楽は,その全てが「柔」と「剛」とかいうことはなく「柔」と「剛」が混じり合っています。それをどのように演奏するかが演奏家です。例えば,ピアニストを野球の投手に例えると,投球術(テクニック)はもとより,「緩急」や「スタミナ」も必要です。また,その投手のタイプ,つまり剛速球投手なのか,技巧派投手なのか,あるいはベテランの味を出すとかが,多分,ピアニストの個性ということになるのではないでしょうか。

 

【クリスタルホール】

なるほど…。月並みな質問になりますが,浅利さんがクラシック音楽にくびったけになってしまったきっかけは何だったのですか。

 

【浅利】

私がクラシックにくびったけになった要因は3つあります。中学1年のとき,最初に知り合った友人(附属中でしたので)がクラシック好きで,その友人からクラシック音楽をテープに録音してもらい,聞き始めました。さらに,中学3年間,担任が音楽の先生であったこと,そして伯父がクラシック音楽好きのオーディオマニアで,当時のステレオセットやレコードをいただき,聴いているうちにくびったけになってしまいました。多分,その当時に違う音楽に知り合っていたら,現在の自分はないでしょう。

 

【クリスタルホール】

特に多感な青春時代の環境が将来の方向性に大きな影響を持つということですね。聴くだけでなく,ご自分でも演奏活動はされるのですか。

 

【浅利】

楽器の演奏ができればいいのですが,私の場合は聴くのが専門です。何せ希に見る不器用な人間なものですから…()

 

【クリスタルホール】

いえいえ,決してそんな風には見えませんよ。ファッションセンスや身体能力も抜群で,オールマイティなナイス・ガイそのものですよ。日曜日のラジオ放送の中で,市民の皆さんに何を一番伝えていきたいとお考えですか。

 

【浅利】

旭川は「音楽の街」と言われております。これほど吹奏楽や市民オーケストラ,市民合唱団などの活動が盛んな街は他にないと思います。そんな旭川市民の皆様に,普段なかなか取っつきづらいクラシック音楽を気軽にラジオで聴いていただき,その魅力をお伝えしたいと思っています。また,大雪クリスタルホールという優秀な音楽ホールを旭川市民は有しており,国内外の様々なアーティストが数々の演奏会を開催しているわけですから,そのホールで身近に一流の音楽を聴くことができることを,番組を通じて旭川市民の皆様にお知らせしたいと思っております。

 

【クリスタルホール】

ホールメイトの皆さんは,クラシック音楽にはかなり詳しく,楽しみ方も十分に心得ていらっしゃいますが,初心に返って,浅利流のクラシック入門,楽しみ方といったことについてお聞かせください。

 

【浅利】

入門曲をセレクトするのは難しいですね。ただ,最近はクラシック音楽がテレビのCMやドラマなどで流れることも増えましたので,そういった曲を全曲通して聴くのもいいかもしれません。また,最近売れているCDで,クラシック音楽のコンピレーションアルバムがありますが,こういったCDなどを聴いて,気に入った音楽を改めて全曲盤のCDを購入し,聴くのもいいかもしれません。さらには,図書館でクラシックのCDが借りられますので,気になるCDを借りてみるのもいいでしょう。ちなみに私の入門曲は,先日の「アリス=紗良・オット&オーケストラ・アンサンブル金沢ストリング・カルテット」でも演奏されました,モーツァルトのディヴェルティメントでした。

 

【クリスタルホール】

仮に自称であってもクラシックファンを目指すために心得るべきポイントは何でしょう。

 

【浅利】

クラシック音楽を聴く楽しみは,まずはコンサートに出かけることですね。生の演奏会を聴くことで,音楽への興味は増すわけですし,普段聴かない曲なども,一流の演奏を生で聴くことにより,「次も聴いてみたい!」と思ってしまい,家でCDなどを楽しむということになると思います。あくまで,クラシック音楽の楽しみはコンサート(ライヴ)に出かけることが大事です。

 

【クリスタルホール】

ありがとうございました。お聞きしたいことはまだまだあるのですが,次回のお楽しみとさせていただきます。ホールメイトの皆さん,日曜日の朝9時,FMりべーる「クラシックにくびったけ」で,浅利さんのトークに耳を傾けてみてください。