ロドリーゴ作曲
アランフェス協奏曲より第2楽章
ギター:ペペ・ロメロ
指揮:ネヴィル・マリナー
演奏:アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
1978年8月 スタジオ録音
<推薦評>
この曲は,クラシックの中でも非常に珍しいギター協奏曲である。
CDでは感じられないが,オーケストラと独奏楽器のギターとの音量のバランスが非常に難しいことでも有名で,ライヴ演奏ではこのバランスも重要なところである。
曲については,非常に簡素な書法で作られており,誰しもが認めるギター協奏曲ナンバー1の曲で,特に第2楽章のスペインの旋律らしい切なさは,非常に印象に残るところでもある。
録音では,ナルシソ・イエペスのギター,初演時の指揮者でもあるアタウルフォ・アルヘンタの演奏が有名であるが,このペペ・ロメロのギター・ソロも忘れがたい。
ロメロは,この録音の14年後になる1992年にも,指揮者のマリナーとオーケストラも同じくこの曲を録音しているところを見ると,このコンビが余程音楽的な相性が合うのであろうか。
新盤・旧盤ともに甲乙つけがたい演奏となっているが,録音こそ劣るものの私は旧盤を薦めたい。
基本的には演奏スタイルは新旧ともに同じであるが,ここに挙げる第2楽章の出来が旧盤の方が優れているというか,私の好みに合うのである。
旧盤のこの演奏については,ロメロの感情移入が激しく聞こえ,有名なこの第2楽章はその極致なのである。
新盤の方は,ロメロの音楽が成熟しきっており,堂々とした巨匠風の演奏となっており,曲の作りも非常に大きく,音楽を豊かに歌い上げているのが特徴である。
クラシック音楽は面白いもので,同じ曲を様々な演奏家や指揮者が取り上げ,それを聴き比べることが醍醐味なのであるが,同じ演奏家や指揮者でも,その演奏した年代が違うと曲の作りや印象が代わることが少なくない。
また,この曲の演奏のように,独奏者,指揮者,オケが同じで,しかも両者ともスタジオ録音という中で,14年という狭い録音間隔を持ってしてもやはり音楽が違うのである。
協奏曲という微妙なバランスが必要な音楽であるにも関わらず,前述のとおり新旧盤ともに基本の音楽の構成については同じなのは,独奏者や指揮者などの相性の良さが伺えるのであるが,やはり微妙な場面や特にソロは違った印象を受けるのである。
いずれにしても,この新旧盤についても,その演奏の善し悪しはともかく好き嫌いについては,最後は個人の趣味・嗜好の問題となるのであるが,よりギター・ソロの切なさを追求するのであれば旧盤を,より音楽の安定性や豊かさそしてデジタル録音という音質を追求するのであれば新盤を薦めたい。