2006年11月5日放送 ☆☆

 

ショスタコーヴィチ作曲

 ピアノ協奏曲第1番ハ短調作品35より第1楽章

  ピアノ:アンドレ・プレヴィン

  指揮:レナード・バーンスタイン

  演奏:ニューヨーク・フィルハーモニック

1962年 スタジオ録音

 

<推薦評>

ショスタコーヴィチは,ピアノ協奏曲,ヴァイオリン協奏曲,チェロ協奏曲をそれぞれ2曲ずつ作曲しているが,その中でも最初の協奏曲作品がこのピアノ協奏曲第1番である。

当時のショスタコーヴィチは,作曲する曲ごとに作風が異なる,非常に創作意欲が感じられる時代であり,さらには曲の内容も若々しいものも多い。

この曲の初演は,シュティードリー指揮のレニングラード・フィルハーモニー交響楽団,そしてショスタコーヴィチ自身のピアノによりに行われた。

曲をお聴きいただければ分かるとおり,トランペット協奏曲と言っても過言ではないが,これは構想段階でトランペット協奏曲とされていたことからくるとのことであり,そう言った意味では,合奏協奏曲を思わせる古典的な編成を思い浮かべてしまう。

いずれにせよ,ピアノの華やかな技巧に加えて,トランペットの軽やかな吹奏も聴きどころとなる。

さて,この演奏であるが,バーンスタインの指揮,プレヴィンのピアノというところが面白いカップリングである。

共に両者は,指揮者であり,卓越したピアニストでもあり,その共演は珍しいと言えよう。

この録音に先立って,4年前の1958年には,バーンスタインの弾き振りでピアノ協奏曲の第2番をスタジオ録音しているが,第1番についてはピアノ・ソロをプレヴィンに委ねた訳であるが,これが見事にはまった演奏となった。

蛇足であるが,バーンスタインの弾き振りによるピアノ協奏曲第2番の演奏内容は,一般的には評判が良いものの,私には軽すぎる演奏で,その良さを感じることができず,むしろこの第1番の演奏の方が出来の良さが歴然としているように思える。

話は戻すが,この第1番の演奏は,非常に躍動感があり,豊かな色合いのある非常に分かりやすい演奏で,クラシック初心者あるいはショスタコーヴィチ初心者にもお勧めできる演奏である。

時代背景から,作曲者であるショスタコーヴィチがソヴィエト政府から批判を受け,精神的に屈曲していたころの曲とは思えないほどの爽快な演奏である。

プレヴィンのピアノ・ソロも見事で,明るく軽めなスタイルがバーンスタインの指揮にマッチしている演奏である。

なお,トランペットの軽快な魅力を聴くのであれば,全曲を通して聴くことをお薦めする。