2005年4月1日放送 ☆☆

ブラームス作曲

 大学祝典序曲作品80

  指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ

  演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

  1957年 スタジオ録音


<推薦評>

 この曲は,ブレスラウ大学から名誉博士の称号を受けたブラームスが感謝の意味を込めて,当時の学生の間で親しまれていた4つの学生歌をつなぎ合わせて書いた珍しい作風を持っている序曲である。

 さて,この演奏の指揮者であるハンス・クナッパーツブッシュ(通称:クナ)について少々。 

 ワーグナー,ブルックナー,ベートーヴェン,ブラームス,シューベルトなどを得意にしており,比較的幅広いレパートリーを持っている指揮者であるが,身長1メートル93センチのこの指揮者,巨人クナの作り出す音楽は,正に巨大である。

 オケの練習(セッション)嫌いでは超有名で,即興の雨霰・・・。

 数々の演奏で,クナの指揮に必死についていくオケの姿が容易に想像できるものもあるほど・・・。

 もっとも,この現象はオケだけではなく,ソリストにも言えることで,ベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」でのあの巨匠バックハウスまでもが,クナの想像力にメロメロ状態。

 さらには,作品としての価値が決して高いとは言えない音楽までが,クナの棒にかかると音楽性が浮かび上がってくるほどである(例:シューベルトの軍隊行進曲やコムザークのバーデン娘など)

 このような指揮者が,今後現れてくるとはないことは容易に想像できる。

 クナについては,別の推薦盤でも語ることができそうなので,演奏の内容に移ることとする。

この演奏は,曲の冒頭からとても深いリズムを刻み,大変味わい深い内容となっている。

弦楽器の奏でる優しいメロディは何とも美しく,その後音楽はしだいに盛り上がっていき頂点に達するものの,クナはインテンポで突き進んでいくのである。

名演はこれでは終わらなく,弦楽器はさらに優しく語りかけていくが,曲の中盤では金管を強奏させるなど,何とも楽しい。

生き生きとした美しいピツィカートも印象的で,荘厳な雰囲気となっていく音楽のきっかけを見事に作りだしている。

その後の各テーマの回顧される部分においても,決して急ぐことはなくインテンポで突き進んでいくところが何ともクナらしい。

やがて音楽はコーダを迎えるが,ここでもクナは堂々として微動だにせず音楽を描き出し締めくくっている。

最初にクナのアルバム(当時はLP)がこのアルバムで,以降,この大学祝典序曲のCDをいくつか購入し聴いてきたが,確かに煌びやかな演奏はあるし,生き生きとした表現をする演奏もあるのだが,このように曲を聴いた後の名残惜しさを感じさせる演奏には出会えていない。