2005年9月11日放送 ☆☆

ブルックナー作曲

  交響曲第00番ヘ短調より第4楽章

  指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー

  演奏:ザールブリュッケン放送交響楽団

  2001年3月 スタジオ録音

<推薦評>

 「交響曲第00番」って?という感じであるが,正式名称は「交響曲ヘ短調」で,スコアには「SYMPHONIE F−MOLL」とあるだけで,厳密には「交響曲第00番」というのは間違いである。

ティントナー指揮のCDは「交響曲第00番ヘ短調『習作交響曲』」とか,本CDであるスクロヴァチェフスキー(通称ミスターS)盤では「交響曲ヘ短調『ダブル・ゼロ』」なんてなっている。

いずれにしても,ブルックナー最初の交響曲であることは間違いないのであるが,CDを販売する側が勝手に解釈をしているのが多い世の中で,このような表記が出てきているわけであるが,実はブルックナーは「交響曲第0番」というのも存在しており,その前に作曲されたことから,「0番」に対して「00番」としているようで,番組内では「ザ・ファースト・シンフォニー・コーナー」で取り扱った関係上,より最初の交響曲のイメージを強くするため,あえて「00番」としていることを補足しておきたい。

参考までに,「0番」は実際は交響曲第1番より後に作曲されているが,この曲をブルックナー自身が「Nulte(ドイツ語で0の意味)」としていることを申し添えたい。

ブルックナーについてもう一つ書きたいのが,いわゆる「稿・版」の問題がある。

ブルックナー自身が自らの作品を何度も手直しする癖があり,各交響曲では様々な「稿」や「版」が存在しており,時に我々を混乱させ,時に魅了します。

つまり,簡単に言えば,ブルックナーが完成した交響曲を,後にて直しするのが「稿」,それを出版するのが「版」ということになり,ブルックナーの交響曲のCDには,必ずこの表記がされており,それにより曲の内容が違うということになります。

ただし,この00番は,全交響曲の中で唯一「1863年稿」しかないのが特徴の一つであるが,「習作」と位置づけた曲であることから納得がいく。

さて,演奏内容であるが,☆☆となっているが,これは全曲を通じての評価で,こと第4楽章のみだと☆☆☆としても良く,さらに,同曲のベスト盤であることは間違いない。

ミスターSのブルックナーの交響曲は,どれをとっても非常によい演奏が多く,ヴァントや朝比奈隆亡き後では,現役最高のブルックナー指揮者と言えよう。

曲の各部分の立体的な構成を意識して,各パートの音量の組み立てに十分な気配りをしているところがミスターSの演奏の特徴で,その特徴がこの曲にも顕著に表れており,さわやかなイメージすらも感じる。

特にこの第4楽章はその印象が強く出ており,反復は全て省略し,速めのテンポで明快にまとめている印象だ。

さらには,時折見られる小さなテンポの動きも印象的で,全曲を通じて,作品の良さをまず知るには最適のCDであると思われる。