ビゼー作曲
交響曲ハ長調より第1楽章
指揮:トーマス・ビーチャム
演奏:フランス国立放送管弦楽団
1959年11月 スタジオ録音
<推薦評>
☆1つで推薦盤?と疑問を持つ方もいるかも知れないが,これは2005年当時の評価であり,現在では☆2つ〜3つといっても良い。
音楽,例えばCDの演奏内容そのものは普遍的なものであるが,聴く人間の状況によっては違って聞こえものである。
CDを購入した当時は,受け入れられなかった演奏も,その後に聴いてみると印象が大きく違っていた,ということは日常茶飯事であり,私も現時点で3千枚以上のCDを持っているが,このようなことは多くある。
ただ,全てを聴き直すには,あまりにも時間がかかることから,最初の印象が極めて大事であり,購入したCDを聴いて良い印象を持った演奏は,その後も聴く機会ができるものの,そうではないCDについてはなかなか聴くことがないのが現状である。
さて,ビーチャムが指揮したビゼーの交響曲であるが,先日,別の演奏を聴く機会があって,その演奏と比較するためにCDを引っ張り出してきて聴いたのであるが,以前持っていた印象が大きく違う結果となった。
もっとも,比較対象の演奏の影響がないことはないのであるが・・・。
そもそも,このビーチャムという指揮者,イギリスの裕福な家庭に生まれたのであるが,特別な音楽教育を受けたことがないという異色の指揮者である。
指揮者のデビューは,アマチュアオーケストラの指揮はしていたが,1899年にハレ管弦楽団でハンス・リヒターの代役としてであった。
しかし一説では,適当な代役が見つからなかったため,楽団員が冗談で推薦したところ,採用されてしまったとのことである。
その後は,膨大な財産を惜しげもなく投じ,現在のロンドン・フィルやロイヤル・フィルを創設するまでに至った。
そのビーチャムが,ことのほかに演奏したのが,当時発掘されたこのビゼーの交響曲である。
ということからも,この曲に関してはスペシャリストであることは言うまでもないが,その演奏内容であるが,正に名人芸という言葉が当てはまる。
ビーチャムの指揮による演奏によくある力みが感じられず,快適にオーケストラとこの曲を料理しており,洗練されかつ生き生きとした演奏を披露している。
これにより,この曲の楽しみ方を教わるかのような印象で,若きビゼーの作曲したこの交響曲の魅力を伝えるのに十分な演奏と言えよう。
特に,この第1楽章については,チャーミングな演奏となっており,抒情性の強い続く第2楽章のセンスの良さなどは,マルティノンやミュンシュ,プラッソンなどのフランスの指揮者の演奏の追随を許さない演奏と言える。