外山雄三作曲
管弦楽のためのラプソディ
指揮:沼尻竜典
演奏:東京都交響楽団
2000年7月 スタジオ録音
<推薦評>
この演奏については,曲の解説がメインとなりますのであしからず。
指揮者であり作曲家でもある外山雄三の代表作がこの曲である。
そもそもこの曲は,NHK交響楽団が1960年に世界公演を行う際に演奏する曲として委嘱されたものであり,現在,外国で演奏される機会が最も多い日本の曲の1つと言っても過言ではない。
前記の作曲の背景からもわかるとおり,外国のオーケストラが演奏するのではなく,日本のオーケストラが海外公演をした際に,演奏されるものである。
ただ,以前,札幌のコンサートホールKitaraで,ウラディミール・フェドセーエフ指揮のモスクワ放送響の演奏会において,アンコールとしてこの曲が使われていたのには驚いた(サービス精神旺盛のフェドセーエフならではか)。
演奏時間も7分程度であることから使い勝手がよく,プログラムとアンコールと両方で組み入れられる曲である。
曲は,日本の民謡がモティーフになっており,日本色豊かな曲であることから,海外では受け入れられやすいと考えられる。
曲中のメロディーとリズムは,既存の民謡をそのまま活かしたもので,オーケストラで演奏されるものの,尺八風のフルートや和太鼓に似せた打楽器の音色にするなどの対応があり,民謡の雰囲気を醸し出している。
曲の構成は,「急−緩−急」の3つからなっており,前半の「急」は「手毬歌(「あんたがったどこさ」の歌詞で有名な)」で始まり,その後「北海ソーラン節」「炭坑節」そして「串本節」とつながっていく,正にお祭りムード一色に前半から盛り上げる。
中間の「緩」に入ると,「信濃追分」が出てきて,しっとりとフルート独奏で聴かせ,静けさの中,拍子木を合図に後半の「急」に展開していく。
後半は有名な「八木節」であるが,この日本の民謡メドレーを締めくくるに相応しい展開を見せ,テンポを上げ,そして巧妙にアクセントをつけて終わりに向かって盛り上げるのである。
このメドレーの順番が工夫され,非常に巧妙にできており,単に民謡をつなぎ合わせたものではなく,日本人はもとより外国人に「これこそ日本の民謡である」と訴えるのである。
さて,演奏の方であるが,都響をバックに指揮の沼尻竜典は堅くまとめているといった印象を受けつつ,日本古来の民謡をよく理解し,ソロなどは和楽器的な演奏に徹しており,日本人としても安心して聴くことのできる演奏と言える。