リムスキー=コルサコフ作曲
組曲「金鶏」
指揮:ロリン・マゼール
演奏:クリーヴランド管弦楽団
1979年10月 スタジオ録音
<推薦評>
リムスキー=コルサコフは,15のオペラを作曲したが,事実上最後のオペラとなったのが「金鶏」である。
プーシキンの原作をオペラにしたものであるが,コルサコフ自身は他のオペラ同様に,演奏会用の組曲を作曲する構想を,オペラ作曲以前から持っていたようで,結局,3幕物のオペラを演奏会用組曲とする作業を,オペラ完成後に進めようとしていた。
しかし,その作業に取りかかる直前に,コルサコフは急逝してしまったことから,シテインベルク(コルサコフの娘婿)とグラズノフが共同で,「歌劇『金鶏』からの4つの音楽的絵画」と名付けられて出版されたが,現在は,単純に組曲「金鶏」と呼ばれている。
さて,ロリン・マゼール指揮の演奏であるが,一言で言うと,個性豊かな演奏と言えよう。
マゼールは,若かりし頃は非常に個性的な演奏が多く,その後は個性的な演奏はなりを潜めていたが,最近になり,一部の曲では昔に戻ったようなパフォーマンスを見せてくれている。
若かりし頃というのは1960年代までを指しており,その後とは1970年代以降のことであり,この時期のマゼールはクリーヴランド管弦楽団の音楽監督の頃であった。
クリーヴランド管弦楽団との数多くの演奏群の中にあって,個性のある演奏を披露してくれている数少ない演奏が,この組曲「金鶏」である。
この演奏の特徴は,1つに曲全体を通してのバランスの良さで,マゼールの演奏は,バランスの良い物が多いが,この演奏は特に金管楽器や打楽器のバランスが非常に良く,聴きやすいものとなっている。
次に,弦楽器のビブラートの付け方が挙げられ,特に,第1曲と第3曲が顕著に表れている。
最後に,テンポの揺れを多用しているところで,大きなテンポの揺れこそないが,メロディを歌わせるところでの小さなテンポの揺れが,曲を魅力を引き出している。
第1曲「宮殿のドドン王」のクラリネットソロや,第3曲のビオラとチェロがそれで,他の演奏では聴くことのできないくらいのビブラートをかけており,色気までをも感じさせている。
この組曲「金鶏」という曲は,そもそも録音が少ないことからか,推薦盤が多くないが,このマゼール盤は代表的な演奏と言っても良いだろう。
せっかくなので,組曲「金鶏」の推薦盤を録音年代順に,さらにマゼールが指揮をしている,お薦めのCDを列記しておく(あくまでも私見であるが)。
組曲「金鶏」の推薦CD
ニコライ・ゴロヴァーノフ指揮 大ソヴィエト放送交響楽団(1950年)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮 パリ・ラムルー管弦楽団(1958年)
マゼールのお薦めCD
ベートーヴェン
ウェリントンの勝利 バイエルン放送交響楽団(1995年)
チャイコフスキー
交響曲第4番 クリーヴランド管弦楽団(1979年)
交響曲第5番 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1963年)
ラヴェル
ボレロ ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1996年)
ラ・ヴァルス ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1996年)
スペイン狂詩曲 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1996年)