2008年6月15日放送 ☆☆


リムスキー=コルサコフ作曲

 組曲「金鶏」

  指揮:ロリン・マゼール

  演奏:クリーヴランド管弦楽団

  1979年10月 スタジオ録音


<推薦評>

リムスキー=コルサコフは,15のオペラを作曲したが,事実上最後のオペラとなったのが「金鶏」である。

プーシキンの原作をオペラにしたものであるが,コルサコフ自身は他のオペラ同様に,演奏会用の組曲を作曲する構想を,オペラ作曲以前から持っていたようで,結局,3幕物のオペラを演奏会用組曲とする作業を,オペラ完成後に進めようとしていた。

しかし,その作業に取りかかる直前に,コルサコフは急逝してしまったことから,シテインベルク(コルサコフの娘婿)とグラズノフが共同で,「歌劇『金鶏』からの4つの音楽的絵画」と名付けられて出版されたが,現在は,単純に組曲「金鶏」と呼ばれている。

さて,ロリン・マゼール指揮の演奏であるが,一言で言うと,個性豊かな演奏と言えよう。

マゼールは,若かりし頃は非常に個性的な演奏が多く,その後は個性的な演奏はなりを潜めていたが,最近になり,一部の曲では昔に戻ったようなパフォーマンスを見せてくれている。

若かりし頃というのは1960年代までを指しており,その後とは1970年代以降のことであり,この時期のマゼールはクリーヴランド管弦楽団の音楽監督の頃であった。

クリーヴランド管弦楽団との数多くの演奏群の中にあって,個性のある演奏を披露してくれている数少ない演奏が,この組曲「金鶏」である。

この演奏の特徴は,1つに曲全体を通してのバランスの良さで,マゼールの演奏は,バランスの良い物が多いが,この演奏は特に金管楽器や打楽器のバランスが非常に良く,聴きやすいものとなっている。

次に,弦楽器のビブラートの付け方が挙げられ,特に,第1曲と第3曲が顕著に表れている。

最後に,テンポの揺れを多用しているところで,大きなテンポの揺れこそないが,メロディを歌わせるところでの小さなテンポの揺れが,曲を魅力を引き出している。

第1曲「宮殿のドドン王」のクラリネットソロや,第3曲のビオラとチェロがそれで,他の演奏では聴くことのできないくらいのビブラートをかけており,色気までをも感じさせている。

この組曲「金鶏」という曲は,そもそも録音が少ないことからか,推薦盤が多くないが,このマゼール盤は代表的な演奏と言っても良いだろう。


せっかくなので,組曲「金鶏」の推薦盤を録音年代順に,さらにマゼールが指揮をしている,お薦めのCDを列記しておく(あくまでも私見であるが)


組曲「金鶏」の推薦CD

 ニコライ・ゴロヴァーノフ指揮 大ソヴィエト放送交響楽団(1950年)

 イーゴリ・マルケヴィチ指揮 パリ・ラムルー管弦楽団(1958年)


マゼールのお薦めCD

ベートーヴェン

 ウェリントンの勝利 バイエルン放送交響楽団(1995年)

チャイコフスキー

 交響曲第4番 クリーヴランド管弦楽団(1979年)

 交響曲第5番 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1963年)

ラヴェル

 ボレロ ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1996年)

 ラ・ヴァルス ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1996年)

 スペイン狂詩曲 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1996年)