マーラー作曲
交響曲第4番ト長調
ソプラノ:レリ・グリスト
指揮:レナード・バーンスタイン
演奏:ニューヨーク・フィルハーモニック
1960年2月 スタジオ録音
<推薦評>
番組では,マーラーの生誕150周年特集で取り上げたこの曲であるが,このCDはそれから遡ること50年の1960年の生誕100周年のときに,ニューヨーク・フィルハーモニックの周年プロジェクトの一環で録音されたものである。
バーンスタインはこの頃から,手兵のニューヨーク・フィルとマーラーの一連の録音をSONYに残し,後年,ウィーン・フィルやアムステルダム・コンセルトヘボウ管などとDGに再録音(ライヴ)をしているが,その多くが新録音に軍配が上がるのだが,この曲に限っては旧録音に軍配が上がる。
SONY時代のマーラー交響曲全集の原点が,正にこのCDであり,マーラーへの想いがストレートに表現されている。
第1楽章は旋律の歌わせ方が素晴らしく,これは後年のDG盤のも同様であり,ホルンの美しさも極めて印象的である。
第2楽章も第1楽章同様に旋律の歌わせ方が素晴らしく,特に弦楽器の美しさは特筆すべきものがある。
第3楽章では,一転して美しさから輝きへと変化し,特に後半部のティンパニとハープの対比は見事である。
そして独唱が入る第4楽章であるが,後年のDG盤では何とボーイ・ソプラノを起用しているのであるが,奇抜さやボーイ・ソプラノの健闘は素晴らしいものの,この演奏のグリストの独唱は,それを凌駕している。
脱線するが,バーンスタインは,マーラーの交響曲で,上記のとおり4番の新盤(DG盤)でのボーイ・ソプラノの起用や,ウィーン・フィルとの「大地の歌」では,通常はテノールとアルトを独唱に採用することが多い曲であるが,アルトの代わりにバリトンを採用し成功を収めている(マーラーの指示はテノールとアルトまたはバリトンとなっているので奇抜な採用とは言い切れないが,ほとんどの指揮者が女声と男声でメリハリをつけること,つまりアルトとテノールの選択となることがほとんど)など,独唱者に拘っていることがわかる。
話を戻すが,情熱的な終楽章は,その優れたグリストの独唱を得て,極上の締めを見せてくれている。
最後に,マーラーの交響曲第4番の推薦盤を録音年代順に列記しておく(あくまでも私見であるが)。
マーラー作曲 交響曲第4番の推薦CD
ウィレム・メンゲルベルク指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 ソプラノ:ヨー・ヴィンセント
ブルーノ・ワルター指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック ソプラノ:イルムガルト・ゼーフリート(1953年)
ブルーノ・ワルター指揮 フランス国立管弦楽団 ソプラノ:ヒルデ・ギューテン(1955年)
ブルーノ・ワルター指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ソプラノ:マリア・シュターダー(1955年)
ジョン・バルビローリ指揮 BBC交響楽団 ソプラノ:ヘザー・ハーパー(1967年)
レナード・バーンスタイン指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 ボーイ・ソプラノ:ヘルムート・ヴィテク(1987年)
リッカルト・シャイー指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 ソプラノ:バーバラ・ボニー(1999年)