2011年2月27日・3月6日放送 ☆☆☆

 

マーラー作曲

 交響曲第7番ホ短調「夜の歌」

  指揮:小林研一郎

  演奏:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

  1998年9月 スタジオ録音

 

<推薦評>

1908年9月19日,この曲の初演が行われたのであるが,場所はプラハ。

作曲者自身の指揮で,チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏であり,チェコ・フィルとしてはゆかりの曲である。

ヴァーツラフ・ノイマン指揮の録音以来,約20ぶりにチェコ・フィルがこの曲を録音したのであるが,指揮者は日本が誇るマーラー指揮者の小林研一郎であり,マーラー没後100周年特集ではこの録音を選び,放送した。

この録音は,チェコ・フィルが初演してから90周年記念演奏会で小林が取り上げ,それと平行して録音されたものである。

その演奏内容は実に素晴らしく,気合の入った名演である。

第1楽章は,その冒頭から緊張感に溢れ,例のごとくチェコ・フィルの優秀な金管群も小林の意図を理解し応えている。

第2楽章は,第1楽章から一転して,美しさと懐かしさを感じさせる秀演となっており,小林の浪花節が全開となる。

第3楽章及び第4楽章も第2楽章同様に,美しさが際立っており,特に金管のソロが美演である。

そして第5楽章は強烈なティンパニと金管群に圧倒しフィナーレまで突き進む。

それでいながら乱痴気騒ぎのような演奏とならないところが,小林とチェコ・フィルのコンビであり,同コンビの一連のマーラーやチャイコフスキーの演奏でも聴くことができるが,互いの信頼感の結果であろう。

全曲通じて言えることであるが,前記のとおり金管のソロが美しく,巧妙な弦楽器と管楽器のバランスの心地よく,このオーケストラの性能を十分に発揮している。

冒頭で「日本が誇るマーラー指揮者」と記したが,近年,多くの録音がされているマーラーの交響曲群であるが,現在も活動している指揮者の中でもこれほど充実した演奏を聴かせるコンビはあまりなく,安心してお勧めできる演奏ばかりである。

ただ,ライヴ録音はもとより,スタジオ録音であっても,小林の唸り声は健在()で,耳障りになる方もいるかもしれないが,これだけの名演であるとそれも気にすることはないと思う。

 

最後に,マーラーの交響曲第7番の推薦盤を録音年代順に,さらに小林研一郎のお薦めのCDを列記しておく(あくまでも私見であるが)

 

マーラー作曲 交響曲第7番の推薦CD

 オットー・クレンペラー指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1968年)

レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック(1985年)

クラウス・テンシュテット指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1993年)

 リッカルト・シャイー指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 (1994年)

 

小林研一郎指揮の推薦CD

 ベートーヴェン

  交響曲第9番「合唱付き」 日本フィルハーモニー交響楽団(1999年)

 ブラームス

  交響曲第2番 日本フィルハーモニー交響楽団(1999年)

  ハンガリー舞曲第5番 東京フィルハーモニー交響楽団(2004年)

 ベルリオーズ

  幻想交響曲 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1996年)

  幻想交響曲 日本フィルハーモニー交響楽団(1993年)

 チャイコフスキー

  交響曲第4番 日本フィルハーモニー交響楽団(1994年)

  交響曲第5番 日本フィルハーモニー交響楽団(1995年)

  交響曲第5番 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1999年)

  交響曲第5番 日本フィルハーモニー交響楽団(2004年)

  交響曲第5番 アーネム・フィルハーモニー管弦楽団(2005年)

 ドヴォルザーク

  交響曲第8番「イギリス」 東京フィルハーモニー交響楽団(2004年)

 スメタナ

  連作交響詩「わが祖国」 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(2002年)

 マーラー

  交響曲第1番「巨人」 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1998年)

  交響曲第1番「巨人」 日本フィルハーモニー交響楽団(2005年)

  交響曲第5番 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1999年)

 ショスタコーヴィチ

  交響曲第5番「革命」 名古屋フィルハーモニー交響楽団(1999年)