2011年2月13日・20日放送 ☆☆☆

 

マーラー作曲

 交響曲第6番イ短調「悲劇的」

  指揮:クラウス・テンシュテット

  演奏:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

  1991年11月 ライヴ録音

 

<推薦評>

テンシュテットは,ロンドン・フィルと2種類,マーラーの交響曲第6番の録音を残している。

1つは1983年のスタジオ録音で,もう1種がこの1991年のライヴ録音である。

どちらも名演であるが,燃焼度でいえばこのライヴ録音の方が上である。

第1楽章は,冒頭から晩年のテンシュテットらしいテンポの収縮が多く見られる。

また,美しいフレーズを色彩豊かに歌わせており,これまたテンシュテットらしさ全開となっている。

終結部の開放感は非常にドラマティックで,第1楽章が終了する。

第2楽章は,冒頭から凄まじい迫力で突き進み,その後,天国と地獄の様相が展開され,他の演奏と比較し,陰鬱な雰囲気もかもし出している。

第3楽章は,他の演奏を凌駕するほどの柔らかさを感じさせる美演となっている。

テンシュテットのこの楽章の美しさは際立っており,他の演奏の追随を許さないものである。

そして,極めて大きい規模を持っている第4楽章であるが,珍しい楽器のオンパレードで,グロッケンシュピール,チェレスタ,チャイムやタムタム,ハンマーまでが登場する。

その終楽章をテンシュテットの演奏では,誠におぞましい音楽を展開していく。

 時折,残虐にも聴こえる演奏であるが,特にこのライヴ盤ではそれが強調され,聴き手に圧倒的な印象を残して終結するのである。

 

最後に,マーラーの交響曲第6番の推薦盤を録音年代順に,さらにテンシュテットが指揮をしている,お薦めのCDを列記しておく(あくまでも私見であるが)

 

マーラー作曲 交響曲第6番の推薦CD

 ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック(1955年)

 レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック(1967年)

 ジェイムズ・レヴァイン指揮 ロンドン交響楽団(1978年)

 レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1988年)

 ジョルジュ・プレートル指揮 ウィーン交響楽団(1991年)

 ヴァーツラフ・ノイマン指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1995年)

 ヴァレリー・ゲルギエフ指揮 ロンドン交響楽団(2007年)

 

テンシュテットのお薦めCD

ベートーヴェン

 交響曲第9番「合唱付き」 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1985年)

ブルックナー

  交響曲第4番「ロマンティック」 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1984年)

シューマン作曲

  4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1978年)

 マーラー

  交響曲第1番「巨人」 シカゴ交響楽団(1990年)

  交響曲第2番「復活」 北ドイツ放送交響楽団(1980年)

  交響曲第5番 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1988年)

  交響曲第7番「夜の歌」 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1993年)

  交響曲第8番「千人の交響曲」 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1991年)

  交響曲第9番 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1979年)

  交響曲第10番 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1978年)

コダーイ

組曲「ハーリ・ヤーノシュ」 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1983年)