2007年8月12日放送 ☆☆☆☆ ★

 

ブルックナー作曲

 交響曲第9番ニ短調より第2楽章

  指揮:朝比奈隆

  演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団

  1995年4月 ライヴ録音

 

<推薦評>

 この演奏は,1995年4月23日の大阪シンフォニーホールでのライヴ録音であり,当時進行されていた朝比奈隆の新たなブルックナー交響曲全集の有終の美を飾る録音であった。

 朝比奈隆のブルックナーの第9と言えば,1991年の東京交響楽団の録音が名盤とされていたが,この演奏はそれと並んで,あるいはそれ以上の演奏を聴かせてくれている。

特に,このとき完成したブルックナー全集はいずれも優れものであったが,その中でも特に光り輝いている演奏がこの第9である。

東京交響楽団の演奏も確かに捨てがたいのであるが,マイクが離れているせいか,残響が神秘的に聞こえつつも,部分的には効果的になっていないのと比較し,この演奏は前者よりもマイクが近いせいか生々しいフレッシュな演奏に聞こえてくる。

さて,第2楽章のスケルツォであるが,第1楽章にも言えるが,非常に格調の高い演奏で,低弦とティンパニは特筆すべき演奏となっており,荘厳さをも兼ね備えている。

さらに,「朝比奈隆・大阪フィル・ブルックナー」という相性の良さが極めて出ている演奏で,金管や木管の響きの良さが際だっており,その他の弦楽器についても厚みのあるブルックナーサウンドを堪能できる。

テンポ設定は,相変わらず朝比奈節で遅く,しかも安定感のあるものとなっている。

これは東京交響楽団の演奏も同様であるが,比較するとさらに音響や各パートの音がクリアになっている。

私は,この第2楽章のスケルツォについては,重戦車的な演奏を好むのであるが,他の演奏を聴くときにもこの演奏との比較となってしまうほど,この演奏は私の理想に近い演奏と言える。

全曲を通じて聴き入ると,いつも朝比奈隆の魂に触れている感じが受ける演奏で,朝比奈隆の「魂の響き」を聴きたい方はこの演奏をどうぞ。