クラシックにくびったけ  
     

G・エネスコ
 

ルーマニア狂詩曲第1番作品11の1

【特選】
  指揮:レオポルト・ストコフスキー
  演奏:RCAビクター交響楽団
  録音:1960年

【推薦①】
  指揮:ハインツ・レーグナー
  演奏:ベルリン放送交響楽団
  録音:1977年

【と盤】
  指揮:コンスタンティン・シルヴェストリ
  演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音:1961年


【解説】
 この曲はエネスコ(エネスク)が作曲した管弦楽曲の中で最も有名な曲です。
 ルーマニア狂詩曲は2曲ありますが,第1番は圧倒的に人気があり,演奏機会も多くなっております。
 曲は,クラリネットとオーボエの掛け合いでメロディが奏でられ,次第にリズムが舞曲調になっていきます。
 やがて八分の六拍子へと曲は変化し,スキップ風のメロディ,東洋的な重々しいメロディを展開した後に,フルートの軽やかなメロディを契機に,管弦楽が前合奏で強い舞曲が始まり,ジプシー風の力強い舞曲が曲をクライマックスに導いて,一旦全休止となり,東洋風の行進曲で落ち着きを取り戻したかと思えば,再度熱狂的な曲調に戻り最強音で曲を終わらせます。

【推薦盤】
 この曲には,「この演奏しかいらない」という特選盤が存在します。
 ストコフスキー=RCAビクター響の60年のスタジオ録音がそれです。
 この演奏が含まれているCDは「ラプソディーズ」と名付けられており,この曲のほかに,リストのハンガリー狂詩曲第2番,スメタナの交響詩「モルダウ」,歌劇「売られた花嫁」序曲などとなっており,そのいずれの演奏もストコフスキーらしい鬼才ぶりを発揮した演奏で,特にこの曲とハンガリー狂詩曲第2番は,同曲のベスト盤として燦然と輝く名演となっております。
 さて,演奏内容ですが,ストコフスキー節全開の演奏で,この曲の特徴を十二分に活かした,そして曲の魅力を引き出したもので,RCAビクター響という臨時編成のオーケストラをもストコフスキー色に染めております。
 まるでジェットコースターに乗っているようなスピード感覚と緩急,サウンドも幅広く,申し分ない演奏と言えましょう。
 また,この録音は,LP時代から名録音という評価を受けており,60年という録音時期には考えられないほどの高品質の録音となっております(ハイファイLPと言われておりました)。
 なお,RCAビクター響とは,ニューヨーク在住のフリーランスの奏者を集めた,録音専門のオーケストラです(したがって,ライヴ録音は存在しません)。

 次に推薦盤ですが,レーグナー=ベルリン放送響の77年の録音をお薦めしましょう。
 レーグナーは,非常に冷静かつ端正な演奏を数多く残しており,例えば同オーケストラとのブルックナーの交響曲選集や,ビゼーの管弦楽曲集,ワーグナーの交響曲,読売日本響とのベートーヴェンの交響曲全集がそれに当たるのですが,一方でスタジオ録音ながら異常にハイテンションな力演を聴かせてくれているブラームスのハンガリー舞曲集などもあります。
 この曲の演奏は,後者の部類に入り,非常にスリリングな演奏となっており,狂詩曲ならではの狂喜乱舞的な演奏で,非常にクールでオーケストラを煽るようなことはしないレーグナーの指揮ぶりからは考えられないような音が聴ける,貴重な名盤と言えます。

 最後に,推薦盤でもあり「と盤」でもある,シルヴェストリ=ウィーン・フィルの61年の録音を紹介しましょう。
 この演奏は,ある意味では非常に暑苦しい演奏とも言え,天下のウィーン・フィルをシルヴェストリが引きずり回している印象で,ウィーン・フィルがシルヴェストリの熱すぎる情熱に着いていけずに,アンサンブルが乱れているという,スタジオ録音では考えられない演奏になっております。
 しかしながら,シルヴェストリのこの曲に対する愛情はたっぷりと感じさせる演奏でもあり,NHK響とのライヴ録音でも同じような印象を受ける「こだわり」を感じさせる演奏でもあります。
 万人にはお勧めできない演奏ではありますが,貴重なシルヴェストリの熱演であることは間違いありません。

 ※「と盤」とは,とんでもない演奏の録音を指すものです。