クラシックにくびったけ  
     

J・オッフェンバック
 

喜歌劇「天国と地獄」より序曲

【特選】
  指揮:マルク・ミンコフスキ
  演奏:ルーヴル宮音楽隊
  録音:2006年ライヴ

【推薦①】
  指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
  演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音:1981年

【推薦②】
  指揮:レナード・バーンスタイン
  演奏:ニューヨーク・フィルハーモニック
  録音:1967年

   


【解説】
 この曲は,ドイツ生まれでフランス(後に帰化)で活躍したオペレッタ作曲家でありますオッフェンバックの代表作の序曲で,正式名称は喜歌劇(またはオペラ・ブッフ)「地獄のオルフェ」と言います。
 「天国と地獄」という名称で呼んでいるのは日本だけで,これは1914年の日本の帝劇での初演時の邦題に基づくものです。
 この喜歌劇は,初演当時は大変な人気を博したようで,初演から228回連続公演を記録した大ヒット作であります。
 原曲はフランス語でありますが,他のオッフェンバックの作品同様に,ドイツ語上演が非常に多く,レコード時代にはドイツ語の全曲盤しかなかったとのことです。
 その内容は,グルックが作曲した歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」のパロディとして作曲されたものです。
 実は,厳密にはこの序曲はオッフェンバックが作曲したものではなく,オリジナル版には序曲がありませんでしたが,ウィーン初演(ドイツ語版)のためにカール・ビンダーが劇中の曲を編曲してつなげたものであります(劇中曲のつなぎ合わせという点では,オッフェンバックが作曲したようなものではありますが・・・)。
 この序曲は,全体が3つの部分で構成されており,特に第3部が有名で,「カンカン(ギャロップ)」と呼ばれており,本編では地獄でのダンスシーン及びフィナーレのソプラノ独唱と合唱で歌われます。
 この旋律はサン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」の第1曲の「亀」でパロディとしており,日本ではカステラの文明堂のCM「カステラ1番,電話は2番,3時のおやつは文明堂・・・」でも有名です。

【推薦盤】
 このような大衆クラシックという分野の演奏をさせると,非常に上手い指揮者が2名おります。
 非常にゴージャスな演奏を披露するカラヤンと,非常にダイナミックな演奏を披露するバーンスタインで,スタイルのお好みで選んでいただければと思います。
 しかしながら,この曲だけは特選盤を,ミンコフスキ=ルーヴル宮音楽隊の2006年ライヴに双方とも譲ります。
 ミンコフスキは様々な作曲家の録音を残しておりますが,そのどれもが個性的で魅力たっぷりの演奏群でありますが,特にオッフェンバックの演奏には定評があり,フランス・バロックのスペシャリストであるとともに,オッフェンバックも得意としております。
 パリ・シャトレ座のオッフェンバック・ガラ・コンサートはDVDとしてもリリースされているほか,最近ではあまり演奏されることのない喜歌劇「天国と地獄」や「美しきエレーヌ」の全曲盤もCD・DVDのそれぞれでリリースしているほどです。
 その演奏は,古楽器演奏の特徴でもある非常にメリハリのきいた,というより刺激の非常に多い,しかも飽きさせない演奏内容となっており,ハイドンの交響曲集と並んで私の愛聴盤でもあります。

 推薦盤ですが,カラヤン=ベルリン・フィルの81年の録音からいきましょう。
 正にゴージャスな演奏で,カンカンも申し分ない楽しさ,オーケストラも十分に鳴っており,何も考えずに耳に入ってくるような演奏です。

 一方,推薦盤のバーンスタイン=ニューヨーク・フィルの67年の演奏も正にダイナミックな演奏で,躍動感溢れる演奏となっており(ニューヨーク・フィル時代のバーンスタインの良さが前面に出た演奏),ヨーロッパ音楽とは一線を画した明るいものとなっております。