【推薦盤】
この曲集については,全5曲を所有しているのが3つの音源しかなく,そのいずれもが推薦に値しますので,それらを順に紹介していきたいと思います。
まずは特選盤ですが,名盤誉れ高いバルビローリ盤と非常に迷いましたが,デル・マー=ロンドン・フィルの75年の録音としたいと思います。
まず,ノーマン・デル・マーですが,ビーチャムが創設したロイヤル・フィルのホルン奏者としてキャリアをスタートさせましたが,やがてビーチャムに見込まれて指揮者として28歳でデビューし,ビーチャム仕込みの大胆な表現がイギリスでは非常に人気が高く,実際にプロムスに60年に初登場以来,83年までの間に2回を除き毎年登場していた指揮者で,その録音数は非常に少なく,私もほとんど所有しておりませんが,R・シュトラウスの交響的幻想曲「イタリアより」はオルフス響との録音で特選盤としておりますし,チャイコフスキーの交響曲第5番(ロンドン・フィル)でも推薦盤にするほど,表現豊かな指揮者です。
エルガーの演奏においても,エニグマ変奏曲で好演を残しております。
さて,その演奏内容でありますが,上記のエニグマ変奏曲を大きく上回る,数少ないデル・マーの録音の中でも非常に印象的かつ代表盤と言っても過言ではないでしょう。
派手さでは誰にも負けないであろう後述のショルティ盤を遙かに上回る激しいパッションで曲を進め,テンポは速めを採用し,グイグイと前進していく演奏となっております。
特筆すべきは代表曲の第1番で,打楽器は強打,弦楽器は大蛇のようにうねり,金管は圧倒的に咆哮し,挙げ句の果てには最後の場面ではオルガンが鳴り響くという,このような情熱溢れる演奏も珍しく,正に鋼鉄製の威風堂々であります。
次に推薦盤ですが,特選盤と迷った,バルビローリ=フィルハーモニア管の62年と66年の録音としたいと思います。
この演奏は,テンポ設定が非常に良く,少々ゆったり目のテンポで度の曲も進み,表現も非常に丁寧で,弦楽器,木管楽器,金管楽器,打楽器と,各セクションがバランス良く聴くことができます。
バルビローリらしい叙情的で優美さが表現されていることも特筆されますが,「行進曲」という観点からは勢いが若干足りないのが玉に瑕です。
もう1つの推薦盤として,ショルティ=ロンドン・フィルの76年の録音をお薦めします。
バルビローリと比較して,推進力は一枚も二枚も上手な演奏がショルティ盤で,ロンドン・フィルの明るい響きが曲調に正にピッタリはまっております。
もちろん,ショルティのことですから,バルビローリのような抒情性は皆無ですが,「行進曲」ということを鑑みると,このくらいの演奏もあっても良いかと思います。
なお,一番有名な第1番については,A・デイヴィス=フィルハーモニア管のいかにもイギリス人らしいダイナミックな演奏(プロムスでも指揮をしていた映像があります)や,バーンスタイン=ニューヨーク・フィルの若かりし情熱溢れた演奏,同じくバーンスタイン=BBC響との円熟の演奏(第2番も収録)もお薦めできます。
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