クラシックにくびったけ  
     

G・ビゼー

 
「カルメン」組曲

【特選】
   指揮:アンドレ・クリュイタンス
   演奏:パリ音楽院管弦楽団
   録音:1964年

【推薦①】
   指揮:ポール・パレー
   演奏:デトロイト交響楽団
   録音:1956年

【推薦②】
   指揮:シャルル・デュトワ
   演奏:モントリオール交響楽団
   録音:1986年

【推薦③】
   指揮:チョン・ミュンフン
   演奏:パリ・バスティーユ管弦楽団
   録音:1991年

【推薦④】
   指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
   演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音:1970年

【推薦⑤】
   指揮:ヘルベルト・ケーゲル
   演奏:ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音:1986年

【推薦⑥】
   指揮:イーゴリ・マルケヴィチ
   演奏:ラムルー管弦楽団
   録音:1959年

【推薦⑦】
   指揮:アルトゥーロ・トスカニーニ
   演奏:NBC交響楽団
   録音:1952年


【解説】
この曲は,言うまでもなくビゼーの代表作であるオペラ「カルメン」から,前奏曲や間奏曲,名場面などを抜粋して組曲としたものです。
では,どの曲を抜粋しているかと言えば・・・,バラバラです。
一応,ホフマンが選曲・編曲したもの(第1組曲・第2組曲)がありますが,これがスタンダードかと言えばそうでもなく,結局は指揮者なりが選曲しているのが実態で,それぞれのCDでも選曲が違うことは当然です。
よって,単純に演奏を比較できないものの,演奏の質のみを捉えてセレクトしてみました。

【推薦盤】
カルメン組曲と言えば,代表盤として挙げられるのが,クリュイタンス=パリ音楽院管(64年録音)です。
「アルルの女」組曲とのカップリングで,どちらの演奏も素晴らしく,安心して聴くことのできる,正に定番と言えましょう。
流麗さが際だったパリ音楽院管の全盛期の録音で,クリュイタンスの気品が出ている代表的な録音です。

クリュイタンスと同様のスタイルを取った演奏として,パレー=デトロイト響(56年録音)が挙げられます。
パレーのフランス物も非常に定評があるとともに,マーキュリーの録音の良さも際だっております。
この時代にして,これだけの音質を残せるのは,当時のマーキュリーくらいなものでしょう。
マーキュリーのパレーの録音は,正直言って「全て買い」です。
その上品な表現はフランス物にピッタリで,シャブリエの狂詩曲「スペイン」などは最高です。
この指揮者,オーケストラ・ビルダーとしても定評が高く,このデトロイト響も音楽監督として,パレーとの12年間とその後のドラティとの5年間で,一気にアメリカ有数のオーケストラへとのし上がりました。

フランスもので欠かせないのが,デュトワ=モントリオール響(86年録音)です。
「アルルの女」組曲同様に,優秀な録音をバックに,クリアな演奏を披露しております。
もちろん,デュトワですから,力むことのない演奏となっており,部類としては上記のクリュイタンスやパレーと同じとなります。

上記の3つの録音に対して,基本的スタイルは同じですが,多少力みが加わる演奏として,チョン・ミュンフン=パリ・バスティーユ管(91年録音)の演奏があります。
このコンビは,結構良い演奏を残しており,その代表例がこのCDやベルリオーズの幻想交響曲ということになります。
パリ・バスティーユ管は,そもそもパリ国立歌劇場管弦楽団のことで,バスティーユ劇場がオープンしてから,この名前で呼ばれておりますが,それ以前はパリ・オペラ座管弦楽団とも呼ばれており,シューリヒトとのモーツァルトの録音で知られております。
昔は,二流オケのイメージが強かったですが,現在では非常に優れたオケとしても知られております。

チョンの演奏をさらに力強くしたものがカラヤン=ベルリン・フィル(70年録音)ということになります。
「アルルの女」組曲といい,こういう曲のカラヤンは本当に上手ですよね。
オケの機能を全開に活かしている演奏です。
こういう演奏を聴くと,ベルリン・フィルの魅力やカラヤンの才能を感じるのですけれど,如何せんカラヤンのドイツものは聴けないなぁ・・・。

上記に挙げた演奏と正反対のものとして,ケーゲル=ドレスデン・フィル(86年録音)を挙げましょう。
ケーゲルの名前が出てくるたびに,そのどす黒さ,重さを感じる録音ばかりですが(ムソルグスキーの「展覧会の絵」やベルリオーズの幻想交響曲,マーラーの交響曲第1番など),この録音も正にそれらと同様の演奏となっております。
そういえば,ケーゲルといい,カラヤンといい,チョンといい,オケは違いますがオペラのこの曲でも名盤を残しておりますね(ケーゲルはライプツィヒ放送響,カラヤンはウィーン・フィル,チョンはフランス放送フィル)。
全曲で名盤であれば,当然組曲でも名盤となるでしょう。

カラヤンの演奏にデフォルメを加えて個性的な印象を与えている演奏として,マルケヴィチ=ラムルー管(59年録音)があります。
「アルルの女」組曲と同様に昔から定番の演奏として知られておりますが,マルケヴィチの録音の中でも代表作と言ってよいのが,このCDでありましょう。
時折見せる,奇才ぶりがたまらなく良いです。

最後に,トスカニーニ=NBC響(52年録音)を挙げておきましょう。
この演奏は,単に前奏曲や間奏曲で構成されているのではなく,ある意味,物語チックに選曲されているのが最大の特徴で,この選曲で現代の指揮者も録音したら良いのに・・・,と思ってしまうほど,しっかりとはまった選曲となっております。
もちろん,演奏内容もトスカニーニらしい小気味の良い演奏で,全体を盛り上げております。
その他にも,ダイナミックさが売りの佐渡裕=フランス放送フィルやバーンスタイン=ニューヨーク・フィルの演奏,アンセルメの手堅い演奏などがあります。