クラシックにくびったけ  
     

G・ガーシュウィン
 

パリのアメリカ人

 【特選】
   指揮:シャルル・デュトワ
   演奏:モントリオール交響楽団
   録音:1988年

 【推薦①】
   指揮:レナード・バーンスタイン
   演奏:ニューヨーク・フィルハーモニック
   録音:1958年

 【推薦②】
   指揮:リッカルド・シャイー
   演奏:クリーヴランド管弦楽団
   録音:1985年

 【推薦③】
   指揮:ジェイムズ・レヴァイン
   演奏:シカゴ交響楽団
   録音:1990年

【解説】
 この曲は,ガーシュウィンが作曲した一種の交響詩であるとともにシンフォニック・ジャズでもあり,「ラプロディ・イン・ブルー」と並んでガーシュウィンの代表作であります。
 28年にニューヨーク・フィルの委嘱を受けて作曲されたもので,20年代にガーシュウィンが過ごしたパリの活気に触発されて作曲した標題音楽であります。
 曲内にも登場する自動車のクラクションが代表されるように,都会の生活の喧騒がウィットを交えて楽しく描き出されております。
 ちなみにこのクラクションは逸話があり,ニューヨークでの初演のために,ガーシュウィンがパリのタクシーのクラクションを持ち帰ったとのことです。
 ガーシュウィンによる初稿とワトソン(ガーシュウィンの作品の出版社の編集者)による改訂稿が存在しますが,専ら現在演奏されるのは後者の改訂稿であります。
 演奏に際しては,通常のオーケストラに加えて,チェレスタやサクソフォーンなどの現代楽器も使用されております(もちろんタクシーのクラクションも・・・)。


【推薦盤】
 推薦盤ですが,この曲の場合はジャズの要素が非常に大きいことから,ジャズの精神が宿っており,日頃からジャズに親しんでいる北米のオーケストラで聴きたい曲であります。
 従って,特選盤・推薦盤については,全て北米のオーケストラとしました。

 その中で,演奏,録音ともに素晴らしいのが,デュトワ=モントリオール響の88年の録音で,この演奏を特選盤とします。
 デュトワのこの時代の録音は,得意のフランスものを中心として非常に充実しているとともに,録音の良さも特筆すべきものがあり,曲の印象をさらに良くしている要因でもあります。
 この演奏でも同様で,その優秀な録音に加え,デュトワのウィットに富んだ表現のセンスが抜群に良く,フランスものが得意なデュトワが表現した当時のパリの様子が,見事に描写されております。

 次に,推薦盤を3つ紹介しましょう。
 最初に,バーンスタイン=ニューヨーク・フィルの58年の録音をお薦めしましょう。
 この録音は,バーンスタインがニューヨーク・フィルと数々の録音を残しておりますが,その録音群の中でも最も早い時期の録音です。
 バーンスタインのCBS時代のダイナミックな演奏が聴くことができ,オーケストラも派手になっております。
 アメリカの作曲家の音楽は,バーンスタインの録音があればそれを購入すれば「当たり」だと思っております(ガーシュウィンはもとよりアイヴスやグローフェなどなど)。

 次に,シャイー=クリーヴランド管の85年の演奏をお薦めしましょう。
 シャイーが,アメリカ人の曲でしかもシンフォニック・ジャズのこの曲を振るの,という意外な感じがする方もいるかとは思いますが,知る人ぞ知る,シャイーは若い頃にジャズ・ドラムに夢中だったという経歴を持っております。
 そもそもシャイーはイタリア人で,その指揮から出てくる音色は非常に根明で,これが彼のドイツ音楽を私が否定したくなる要因でもあるのですが,一方でこの曲はそのような心配はいらず,シャイーのいつもどおりの非常に根明演奏となっております。
 同じガーシュウィンのラプソディ・イン・ブルー(ピアノはラベック姉妹)とともに素晴らしい演奏で,十分にお薦めできます。

 最後に,レヴァイン=シカゴ響の90年の録音を紹介しましょう。
 この演奏は,スーパーオーケストラのシカゴ響のスペシャリストたちが,我が物のシンフォニック・ジャズを楽しんで演奏しているような雰囲気です。
 特に中間部のブルースの部分については,他の演奏の追随を許しません。
 なお,北米以外のオーケストラで聴くならば,プレヴィン=ロンドン響の演奏は,プレヴィンらしいセンスが光っている好演です。