クラシックにくびったけ  
     

N・A・リムスキー=コルサコフ
 
スペイン奇想曲作品34

 【特選】

   指揮:エフゲニー・スヴェトラーノフ

   演奏:ロシア国立交響楽団

   録音:1992年

 【推薦①】

   指揮:ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ

   演奏:パリ管弦楽団

   録音:1976年

 【推薦②】

   指揮:ロリン・マゼール

   演奏:クリーヴランド管弦楽団

   録音:1979年

 【推薦③】

   指揮:ポール・パレー

   演奏:デトロイト交響楽団

   録音:1953年

 

【解説】

 この曲は,R=コルサコフが作曲した代表的な管弦楽曲の1つで,同時期に交響組曲「シェエラザード」や序曲「ロシアの復活祭」も書いておりますことから,充実した時期の作品と言えるでしょう。

 この曲は,ヴァイオリンをはじめとして様々な楽器がソロで活躍する場面が多いのですが,それはこの曲の作曲に当たり,当初は「スペインの主題によるヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」としてスケッチされましたが,途中で変更し現在の形となったことが影響しております。

 この曲は5つの場面から構成されており,順に,「アルボラーダ」「変奏曲」「アルボラーダ」「シェーナとジプシーの歌」「アストゥリア地方のファンタンゴ

となっております

 なお,この曲には吹奏楽版やピアノ連弾版も存在します。

 

(特選盤)

 この曲の特選盤は,なかなか決まりませんでしたが,結局消去法で,スヴェトラーノフ=ロシア国立響の92年の録音としました。

 どうやら,世間では旧盤(R=コルサコフ交響曲・管弦楽曲全集)の評判が良いのですが,その音源を所有しておりませんので,新盤をお薦めしましょう。

 この頃のスヴェトラーノフは,日本でのチャイコフスキー交響曲チクルスを成功させたことを契機として,そのライヴ録音を担当したCANYONの録音技術に大いに感動したそうで,その後にもチャイコフスキーの交響曲全集を同じレーベルで3年後にセッション録音するほか,この曲が入っているロシア名曲集など,多くの録音を非常に良い録音条件で残しております。

 ちなみにこの頃のCANYONはスヴェトラーノフのほか,小林研一郎=日本フィルとのチャイコフスキー交響曲全集やマーラーの交響曲全集,朝比奈隆=大阪フィルなどのブルックナーやベートーヴェンの交響曲全集など,破竹の勢いで名演奏・名録音を残しております。

 さて,演奏内容ですが,スヴェトラーノフらしいダイナミックな演奏を披露しているものの,彼らしい重戦車的な壮絶な演奏とまでは行っていない印象です。

 しかしながら,セッション録音でありますことから,細部にわたってこだわりを見せた演奏となっており,前述のとおり消去法ではありますが,特選盤といたしましょう。

 

(推薦盤①)

 次に推薦盤ですが,まずは,ロストロポーヴィチ=パリ管の76年の録音をお薦めしましょう。

 この演奏は,名盤誉れ高いR=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」のアルバムに入っておりますが,この「シェエラザード」も大変素晴らしい演奏ですが,この曲も負けじと素晴らしい演奏になっており,特に非常に起伏のある演奏,パリ管の頑張りも良く,ダイナミックなスタイルを取っております。

 

(推薦盤②)

 次に,少々変わった演奏ながら,その内容が素晴らしい,マゼール=クリーヴランド管の79年の録音を紹介しましょう。

 この演奏は,実にロシア臭さを全く感じさせない演奏で,これはこのコンビの特徴でもあり,同コンビのチャイコフスキーの後記交響曲集しかり,プロコフィエフのバレエ「ロメオとジュリエット」しかりです。

 しかしながら,非常に俊敏で明快な曲づくりを行っており,色彩感豊かなところが共通している演奏群です。

 

(推薦盤③)

 最後に,パレー=デトロイト響の53年の録音を紹介しましょう。

 他の曲でも紹介しておりますが,当時のMERCURYの録音は驚異的で,モノラル終期からステレオ初期の録音ながら,非常に鮮明で鮮烈なサウンドは素晴らしいです(パレーやドラティの録音が多い)。

 今回紹介するのは,音源はMERCURYですが,タワーレコードが独自企画「ポール・パレーの芸術」で世界初CD化されたものです(MERCURYの通常盤では,この曲はドラティの録音がCD化されています)。

 さて,演奏の内容でありますが,パレーらしいきびきびとしたテンポで軽快・颯爽に曲を展開させており,力みのない演奏となっております。

 その他にも,デュトワ=モントリオール響の明快な演奏も悪くありません。