「展覧会の絵」の推薦盤は,本当はゲルギエフと書きたいのですが,アバド=ベルリン・フィルの93年ライヴでいきたいと思います。
実は,この曲のゲルギエフの生演奏を札幌のキタラで聴いたとき(オーケストラはロッテルダム・フィル)は,キエフの大門が終了後,興奮を通り越し感動して涙が出てきました(このような体験は初めて)。
手兵のキーロフ管との録音はこれを上回っております(後述)が,この時の感動までは行かず,推薦盤とします。
さて話は戻しますが,私自身はアバドという指揮者はあまり好みではないのですが,アバドのムソルグスキーはいいんです,ホント,ムソルグスキーだけは。
スーパーオーケストラのベルリン・フィルのパワーを最大限に活かした演奏となっており,カラヤンのそれを上回っております。
その他の「展覧会の絵」の推薦盤は,古くから愛聴していた音源として,フェドセーエフ=モスクワ放送響(76年録音)を挙げたいと思います。
その迫力も相変わらずですが,細かいニュアンスなどは,アバドを上回っていると言えるでしょう。
元祖,「展覧会の絵」の名演としては,トスカニーニ=NBC響(53年録音)を挙げないわけにはいきません(50年録音より53年の方が,演奏・録音ともに素晴らしいです)。
並々ならぬトスカニーニの情熱が入っている演奏で,きっと鬼の形相でオーケストラと対峙してたのだろうなぁ,と感じる演奏です。
端正な演奏としては,ヴァント=北ドイツ放送響の99年ライヴを挙げたいと思います。
ヴァントに荒々しさを求めることはできませんが,演奏内容が非常に端正で,清潔感のある演奏を披露しております。
迫力不足を気にする人もいると思いますが,この演奏はこれが良いところです。
端正なヴァントとは正反対の演奏が,プレートル=ベルリン・ドイツ響の2008年ライヴです。
自由奔放,豪快そのものの演奏で,最近では大変気に入っている演奏です。
この指揮者,近年の録音を聴く限り,ただ者ではない指揮者で,こんな個性のある指揮者,なかなかおりません(現在現役指揮者ではティーレマンくらいか)。
はっきり言って,プレートルのライヴは全て「買い」だと思っております。
極めつけの「展覧会の絵」の演奏は,チェリビダッケ=ミュンヘン・フィルです。
相変わらずのテンポの遅さを採用しておりますが,これがまた心地がよいのです。
キエフの大門などは,他の演奏と比較して倍近い演奏時間をかけながらゆっくり進み,まるで違う絵を見ながら作曲した感じがするほどです。
ミュンヘンライヴ(93年)と日本ライヴ(86年)がありますが,演奏の出来は前者,録音は後者が優れていると思いますが,基本的には同じスタイルの演奏です。
管弦楽版の最後は,ゲルギエフ=マリンスキー歌劇場管の2004年スタジオ録音です。
冒頭にも書きましたが,この曲のゲルギエフ=ロッテルダム・フィルの札幌キタラでのライヴは凄まじい演奏で,これ以上の演奏はないと思われるほどでした。
ゲルギエフは,2000年にウィーン・フィルとライヴ録音を残しており,同じウィーン・フィルとのチャイコフスキーの交響曲第5番が素晴らしい出来だったことから,最初にこのCDを購入したときは非常に期待感があったのですが,残念ながら燃焼度が低くおとなしい印象さえありました。
その後に,前述のキタラでのライヴを聴き,同じ指揮者でもこうも演奏内容が違うのか(しかも双方ともライヴにも関わらずに・・・),と思いましたが,手兵のマリンスキー歌劇場管と新盤が出たと聞き,最初は躊躇したものの購入しました。
躊躇の理由はライヴ録音ではないことで,ウィーン・フィルとのライヴ録音が低調だったにも関わらず,手兵のマリンスキー歌劇場管とは言いながらもスタジオ録音だとテンションは高くないのでは,と疑っていたからです。
さて,その演奏内容ですが,新盤については推薦盤に十分値する演奏でした。
まず,テンションの高さですが,スタジオ録音の割には高く(とは言ってもキタラの実演よりは低いですが・・・),演奏内容も自在のテンポで見事な演奏であります。
やはり手兵のマリンスキー歌劇場管との演奏が功を奏していたのでしょうか。
さらには,録音についてもSACDということもあり,申し分なく,アバド=ベルリン・フィルの演奏と双璧と言えましょう。
こうなったら,ロッテルダム・フィルとの日本ライヴが発売されないかと期待したいものです。
次に,ピアノ版の「展覧会の絵」ですが,何せ素晴らしいのは,ホロヴィッツの若かりしカーネギーホールのライヴでしょう。
卵の殻をつけた雛の踊りでは,その演奏のユニークさから,客席から笑い声が聞こえるほどで,永遠の名盤です。
なお,この演奏は,当時主流だったR=コルサコフ版ではなく,ホロヴィッツ自ら編曲したもので,原典版に近いものとなっております(所有音源の中にはありませんが,LPで所有しております)。
ムソルグスキー原典版としては,その版の普及をさせるきっかけ,そしてピアノ版をこの世に知らしめたのが,リヒテルの58年のソフィアライヴです。
当時,ロシア国内で絶賛されながらも,西側では幻のピアニストとして知られておりましたリヒテルの西側デビューがこのライヴで,その圧倒的な演奏を耳にした西側諸国のクラシック好きを正に虜にしてしまったのがこの演奏です。
キーシンの非常に明瞭な演奏も好みます(2001年録音)。
このピアニストは,ドイツものですと全然しっくり来ないピアニストですが,ロシア物は非常によい演奏が多く,特にこの演奏やラフマニノフなどが素晴らしいです。
バリー・ダグラスの演奏もお奨めしておきましょう(86年録音)。
このピアニスト,北アイルランド出身で,チャイコフスキーコンクールで第1位を獲得して,RCAからデビューし,チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の後に録音したのがこの演奏。
豪快な演奏というより,細かいところまで行き届いたテクニシャンという感じです。
その他の推薦できる音源として,管弦楽版では,意外とはまっているメータ=ニューヨーク・フィル(その昔エアチェックしたブラジルのライヴは凄かったが・・・),パワーは他をも上回るライナー=シカゴ響,ピアノ版としては,私も持っているCDのほとんどが素晴らしい演奏ばかりで(この曲ぐらいでしょう,ハズレが無くCDを購入できているのは),ムストネンやアファナシエフ,ベルマン,ポゴレリチのいずれも個性豊かなお奨めしたい演奏です。
「と盤」の紹介ですが,まずは演奏が圧倒的にぶっ飛んでいる音源として,ゴロヴァーノフ=モスクワ放送響の53年のモノラル録音から。
この怪物は,何をしでかすかわからないのが魅力ですが,意外と芸風がわかりやすかったりします。
他の指揮者よりも,とにかく大袈裟にしたいという思いが強すぎるため,大見得を張ったリタルダントは得意中の得意で,チャイコフスキーの悲愴の第3楽章終結部のティンパニ4連打は,もはや伝説です。
その怪物にして,格好の「エサ」と言えるのが,正に展覧会の絵でありまして,音符としては編曲されてはいないものの,テンポ・強弱その他音符以外はゴロヴァーノフ編曲ってな感じです。
編曲が「と盤」と言えば,ストコフスキー=ニュー・フィルハーモニア管(66年録音)が挙げられます。
ラヴェルの編曲に慣れている我々を欺くかのように,冒頭のプロムナードから期待を裏切らない編曲内容で,トランペットのあのメロディ,ストコフスキーは弦楽器を採用しているほか,オルガンまで登場。
ただ,全曲を聴くと,不思議と決まっているような感じもするのが,この編曲の魅力でもあるのでしょう。
※「と盤」とは,とんでもない演奏の録音を指すものです。 |