【解説】
この曲は,文字どおりラフマニノフが作曲した3番目のピアノ協奏曲で,第2番同様に代表作となっております。
初演はラフマニノフ自身のピアノ(指揮:ダムロッシュ,演奏:ニューヨーク響)で行われましたが,場所はニューヨークで,ラフマニノフのアメリカ進出の際に行われました(第1回アメリカ演奏旅行)。
曲は,演奏者の技術的かつ音楽的要求の高いものとなっております。
また,ラフマニノフは作曲当初の版とは別に,自身が演奏する際にもカット版で演奏するのが普通となり,作曲者に模して古くはこのカット版で演奏されておりましたが,現在は通常版で演奏されます。
この曲の演奏には2つの逸話が残っております。
1つ目は,初演の翌年に,同じニューヨークでラフマニノフ自身のピアノで再演されましたが,そのときの指揮者がマーラー(演奏はニューヨーク・フィル)で,オーケストラが慣れないスラヴ系のこの名曲に対してざわついていた際に,独奏であり作曲者のラフマニノフの前で,マーラーが「静かにしなさい,これは傑作です」と言い切り,完璧を目指して長時間のリハーサルを繰り返したのに対し,感銘を受けたラフマニノフは,この指揮者マーラーを「ニキシュと同列に扱うに値する指揮者はマーラーだけだ」と断言したとのことでした。
2つ目は,この曲を愛奏したホロヴィッツがアメリカデビューを果たす際に,本番の4日前にラフマニノフと初対面を果たし,その際にこの曲の2台のピアノのための版を2人で演奏(ホロヴィッツがソロ,ラフマニノフが伴奏のそれぞれパートを担当)したことを契機に,2人の交流が始まったとのことです。
作品の構成は,一般的な協奏曲同様に3楽章形式で書かれており,ピアノ協奏曲としては規模が大きく,演奏時間も40分を超えます。
第1楽章は自由なソナタ形式で書かれており,特にピアノが導入する第2主題は抒情的で美しいものとなっております。
第2楽章は三部形式と変奏曲からなっており,「間奏曲」とされておりますが,それ以上の役割を果たす楽章となっております。
第3楽章はソナタ形式となっておりますが,ラフマニノフ独自の形式とも言え,非常に力強い楽章であります。
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