(特選盤)
この曲の特選盤は,マゼール=ウィーン・フィルの96年の録音にしたいと思います。
この演奏が入っているアルバムは,ラヴェルの管弦楽曲集となっており,この曲のほかに,ボレロ,「ダフニスとクロエ第1組曲・第2組曲,ラ・ヴァルスが収録されておりますが,そのどれもが素晴らしい演奏となっており,特にボレロ,ラ・ヴァルスそしてこの曲は,私のそれぞれの曲の特選盤になっているほど充実した演奏群となっております。
よく,フランス音楽はフランスのオーケストラで,ドイツ音楽はドイツのオーケストラで,などと,ご当地のオーケストラの演奏が素晴らしいというのが一般的な評価でもあり,確かにそういったことも言えることが多いのですが,このウィーン・フィルの演奏は,フランスのオーケストラ以上にフランス的で,かつ自由奔放な演奏を披露しているとともに,ウィーン・フィルの機能を十分に発揮している演奏ともなっております。
90年代以降のマゼールは,初期の頃の鬼才ぶりを取り戻しつつ,円熟味を帯びた演奏を披露しており,ブルックナーの交響曲などでも凄演を聴かせてくれますが,このラヴェルの管弦楽曲集も他の演奏を圧倒する内容となっております。
(推薦盤①)
次に推薦盤ですが,前述しましたが,フランスものはフランスのオーケストラという見本的な演奏として,クリュイタンス=パリ音楽院管の61年のスタジオ録音をお薦めしましょう。
正に,フランスのエスプリ的な演奏であり,安心して聴くことができる万人にお勧めしたい演奏内容で,フランスの粋を感じさせるものとなっております。
このコンビのフランスものは,「ハズレ」を聴いたことがないくらい,息もぴったりでオーケストラも鳴っており,それでいながら上品なものとなっております。
(推薦盤②)
そのコンビが,64年に東京でライヴを行った際に収録した演奏がありますが,こちらも推薦盤としたいと思います。
この演奏は,61年のスタジオ録音とは全く別な演奏と言っても良いくらいの演奏で,上品さには欠けておりますが,オーケストラの厳しさや迫力はスタジオ録音を遙かに上回っております。
クリュイタンスという指揮者のライヴ録音はあまり残っておりませんが,64年の日本ライヴが発掘(一部復刻)され,CD化された際に非常に話題となったもので,スタジオ録音では見せないライヴならではの緊張感と激しさが感じられる演奏ばかりで,この曲のほかにもあの伝説的な演奏となっているベルリオーズの幻想交響曲や,アンコール曲として使用されたビゼーの「アルルの女」第2組曲のファランドールなどは,凄まじい演奏となっております。
パリ音楽院管弦楽団は,首席指揮者をミュンシュからクリュイタンスへ49年にバトンタッチし,黄金期を迎え,64年には初来日で上述のような素晴らしい演奏を披露し,その時の逸話として「あまりの演奏の素晴らしさに日本のオーケストラに絶望すら感じさせた」と評されました。
その後,クリュイタンスは67年に急死し,その際に同オーケストラも発展的解散を遂げ,パリ管弦楽団と改組され,一度は引退したミュンシュを再びクラシック界に復活させ,音楽監督として招いたものの,翌68年の演奏旅行中に死去しております。
そのミュンシュがパリ管の初代音楽監督となったときに,僅かばかり(セッション録音はCDで3枚分)の録音を残しており,ベルリオーズの幻想交響曲及びブラームスの交響曲第1番は,それぞれの曲で私も特選盤としておりますが,私のみならず非常に高い世評を獲得しております。
(推薦盤③)
そして,もう1枚がラヴェルの管弦楽曲集(68年録音)で,ボレロ,ダフニスとクロエ第2組曲,亡き王女のためのパヴァーヌ,そしてこの曲で,これも非常に充実した演奏となっております。
ミュンシュは,ボストン響時代もそうでしたが,ライヴでのパフォーマンスは素晴らしく,演奏内容も非常に濃く,その熱血的な指揮ぶり(長い指揮棒をぶん回しております)は,伝説と言っても良いかと思います。
パリ管との3枚のセッション録音は,ライヴを意識したものとなっており,そのテンションの高さはライヴそのものと言っても良いくらいで,内容も充実しており,パリ管の各セクションの鳴りっぷりも申し分ありません。
この曲も,元々ミュンシュが得意としていた曲だけに,素晴らしい出来映えとなっており,クリュイタンスのライヴ盤に近い印象があります。
(推薦盤④)
最後に,フランスものでは外すことのできない,パレー=デトロイト響の62年の録音をお薦めしましょう。
他の曲でも紹介しておりますが,当時のMERCURYの録音は驚異的で,モノラル終期からステレオ初期の録音ながら,非常に鮮明で鮮烈なサウンドは素晴らしいです(パレーやドラティの録音が多い)。
このCDについても録音にメリハリが付いており,一層,パレーの溌剌とした瑞々しい演奏が引き立てられております。
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