クラシックにくびったけ  
     

M・ラヴェル

 
ラ・ヴァルス

   【特選】
    指揮:ロリン・マゼール
    演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
    録音:1996年

   【推薦①】
    指揮:アンドレ・クリュイタンス
    演奏:パリ音楽院管弦楽団
    録音:1961年

   【推薦②】
    指揮:アンドレ・クリュイタンス
    演奏:パリ音楽院管弦楽団
    録音:1964年ライヴ

   【推薦③】
   指揮:シャルル・ミュンシュ
    演奏:ボストン交響楽団
    録音:1962年

   【推薦④】
    指揮:シャルル・デュトワ
    演奏:モントリオール交響楽団
    録音:1981年

   【推薦⑤】
    指揮:ピエール・ブーレーズ
    演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
    録音:1993年

 

【解説】

 ラ・ヴァルスですが,フランス語でワルツのことであり,19世紀末のウィンナ・ワルツへの礼賛として着想されたものです。

 ラヴェル自体の編曲で,2台のピアノ版,ピアノ独奏版も存在します。

 曲は混沌とした雰囲気に始まり,徐々にワルツのリズムとメロディが顔を出し,一旦賑やかにワルツとしての形を整えた後に,ゆったりとした新たな主題が出て,いかにもワルツらしい雰囲気を積み重ねていきますが,展開が進むに連れて徐々にワルツらしいリズムが崩れ始め,テンポも乱れ,転調も繰り返し,リズムが破壊され,最後に冒頭の主題が変形されて再現された後に,無理やり終止するといった,ボレロと並んで問題作と言えましょう。

 

(推薦盤)
 マゼール=ウィーン・フィルのボレロとのカップリングの96年の録音を選びたいと思います。
 ボレロ同様に,艶のあるウィーン・フィルをバックに,縦横無尽な演奏を展開,後半部分のワルツが崩壊していく様は,マゼールの芸風がピッタリとはまっている演奏内容となっております。
 時に下品さも出すこの演奏も,天下のウィーン・フィルという俳優にマゼールが十分な脚色を入れた結果で,名演と言えましょう。

 次に,ボレロと同様に気品を感じさせるクリュイタンス=パリ音楽院管(61年録音)を挙げたいと思います。
 安定感ある演奏の中に,パリ音楽院管の素晴らしい音色が栄えており,迫力も同時に備えている演奏で,マゼール=ウィーン・フィルとよい勝負となる演奏です。
 64年の日本ライヴもありますが,こちらは気品より迫力に重点を置いた演奏となっており,クリュイタンスのライヴならではの演出が楽しめます。
 ミュンシュ=ボストン響(62年録音)の演奏も,古くから人気のある演奏で,王道の演奏と言っても良いでしょう。
 もし,新生パリ管と録音を残していたら,マゼールと並ぶ名園であったことと思いますが,録音が無く残念でなりません。
 ミュンシュの弟子であるデュトワ=モントリオール響(81年録音)も,デュトワの良さが発揮された演奏です。
 デュトワのフランス物の安定感は,現代では最高の指揮者の1人であり,響きを重視した演奏内容がピッタリとはまります。
 録音も優秀で,デュトワの響きを助けている演奏です。
 ブーレーズ=ベルリン・フィル(93年録音)の演奏もなかなかの力演です。
 ブーレーズやアーノンクールにありがちな奇をてらったことはなく,スーパーオケのベルリン・フィルと共存した演奏は,ボレロ,ラ・ヴァルス共々おすすめできる内容です。