クラシックにくびったけ  
     

P・d・レスピーギ

 
交響詩「ローマの松」

【特選】
  指揮:アルトゥーロ・トスカニーニ
  演奏:NBC交響楽団
  録音:1953年

【推薦①】
  指揮:エフゲニー・スヴェトラーノフ
  演奏:ロシア国立交響楽団
  録音:1980年

【推薦②】
  指揮:ダニエレ・ガッティ
  演奏:ローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団
  録音:1996年

【推薦③】
  指揮:フリッツ・ライナー
  演奏:シカゴ交響楽団
  録音:1959年

【推薦④】
  指揮:イシュトヴァーン・ケルテス
  演奏:ロンドン交響楽団
  録音:1968年

【推薦⑤】
  指揮:山田一雄
  演奏:東京都交響楽団
  録音:1989年ライヴ

【推薦⑥】
  指揮:アンドレア・バッティストーニ
  演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
  録音:2013年ライヴ

   


【解説】
 ローマ三部作は,言うまでもなく「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭り」の3つの交響詩を指す,レスピーギの代表作であります。

 「ローマの松」は,ローマ三部作の中では最も人気の高い作品となっており,「ローマの噴水」「ローマの祭り」同様に4つの部分によって構成され,各部分において異なった松と場所・時間を表現し,レスピーギは自身の得意としていた色彩的なオーケストレーションを用いて描写しています。

 レスピーギはこの曲で,単に松を描こうとしたわけではなく,松という自然を通じて,古代ローマへ眼を向け,ローマの幻影に迫ろうという意図を持っていたとされており,そのためこの曲には,グレゴリオ聖歌などの古い教会旋法が好んで使用されております。

 なお,4つの松とは,「ボルゲーゼ荘の松」「カタコンベ近くの松」「ジャニコロの松」「アッピア街道の松」です。

【推薦盤】
 「ローマの噴水」同様,「ローマの松」もトスカニーニ=NBC響(53年のモノラル録音)で決まり。
 一番の人気曲で,前作の「ローマの噴水」と比較してオケの鳴りが重要なファクターとなる曲でありますが,NBC響が大健闘しているとともに,当時としては奇跡的に音質が良い演奏となっております。

 次に,スヴェトラーノフ=ロシア国立響の80年ライヴをお奨めします。
 この演奏は,トスカニーニとは対照的に,じっくりと曲づくりがされているとともに,重戦車のごとくオケが鳴るもので,重度の風邪もぶっ飛ぶ演奏です。
 スヴェトラーノフは,ローマ三部作を結構取り上げており,スウェーデン放送響でもライヴが残っておりますが,どちらの演奏もスヴェトラーノフ節全開の演奏です。
 特に「アッピア街道の松」の終結部分では,スヴェトラーノフ独特の強烈なクレッシェンドで締めており,凄まじいの一言。
 ある意味,この曲の一般的なお奨め演奏は,演奏内容,録音状況などを鑑みると,96年のガッティ=ローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管ということになるかもしれません。
 ガッティの曲づくりは,最近の若い指揮者では珍しく,非常に壮大なものであります。
 きっとオペラを得意としている指揮者であるのが影響しているのでしょう。
 しっかりとした構成を聴くことができる好演です。

 59年のライナー=シカゴ響も「噴水」同様にお奨めできます。
 例のごとく,シカゴ響の鳴りっぷりも申し分ありませんし,ライナーの直線的な解釈も曲にピッタリ来ます。
 ライナーは三部作の録音がなく,「噴水」と「松」だけですが,「祭り」も録音していれば,素晴らしい演奏になっていたことは容易に想像できるだけに,残念でなりません。
 68年のケルテス=ロンドン響の演奏も素晴らしいです。
 ケルテス独特の深みのある演奏となっており,ロンドン響もそれに応えており,渋みすらも感じさせる玄人好みの演奏です。

 最近入手した,とてつもないライヴ録音を2つ。
 まずは,ヤマカズこと山田一雄=東京都響の89年ライヴです。
 普通に考えると,この曲と山田の相性は悪いはずがありませんが,その演奏内容は想像を遙かに超えたパワフルな演奏となっております。
 日本のオーケストラで,ここまでの演奏ができるのかと思うような演奏で,山田の自在のタクトに東京都響がその実力を遺憾なく発揮した怒濤の「ローマの松」を聴くことができます。
 きっと会場内は熱気でムンムンしていたことでしょう。

 最後に,バッティストーニ=東京フィルの2013年のライヴです。
 確かに,トスカニーニ=NBC響の歴史的な名演がこの曲にはありますが,それをも超えるような凄演がとうとう現れました,しかも日本のオーケストラで。
 山田との東京都響の演奏といい,この東京フィルの演奏といい,日本のオーケストラのレベルは確実に上がってきているのでしょう。

 さて,バッティストーニのこの演奏ですが素晴らしいの一言で,金管も十分に鳴っており,曲の魅力を引き出した「歴史的名演」と言っても過言ではないでしょう。
 少なくとも,21世紀では最高の演奏と言えますし(21世紀の録音は他に所有しておりません・・・),その迫力は凄みすら感じさせます。
 しかもバッティストーニは,このライヴ当時は若干26歳というのですから,将来が楽しみな指揮者が一人,出てきました。
 今後の彼の活躍や録音等に注視していかなければなりません。