クラシックにくびったけ  
     

P・d・レスピーギ

 
交響詩「ローマの祭り」

【特選】
  指揮:アンドレア・バッティストーニ
  演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
  録音:2013年ライヴ

【推薦①】
  指揮:リコ・サッカーニ
  演奏:ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団
  録音:1999年ライヴ

【推薦②】
  指揮:アルトゥーロ・トスカニーニ
  演奏:NBC交響楽団
  録音:1949年

【推薦③】
  指揮:エンリケ・バティス
  演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
  録音:1991年

【推薦④】
  指揮:エフゲニー・スヴェトラーノフ
  演奏:ロシア国立交響楽団
  録音:1980年

【推薦⑤】
  指揮:リッカルド・ムーティ
  演奏:フィラデルフィア管弦楽団
  録音:1984年

【推薦⑥】
  指揮:ダニエレ・ガッティ
  演奏:ローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団
  録音:1996年

【推薦⑦】
  指揮:山田一雄
  演奏:東京都交響楽団
  録音:1989年ライヴ

      

【解説】
 ローマ三部作は,言うまでもなく「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭り」の3つの交響詩を指す,レスピーギの代表作であります。

  「ローマの祭り」は,ローマ三部作の中で曲が一番長く,オーケストレーションも大きくなっており,前の2曲同様に4つの部分からなり,切れ間なく演奏されます。

  ローマ三部作の中では人気が一番ないものの,吹奏楽などでの編曲でも知られております。

 4つの部分は,それぞれ違う場所の祭りを描写しております。

 「ローマの松」「ローマの噴水」に比べると,コンサートや録音にて演奏・収録される機会が少ない傾向にあり,かつては「松」「噴水」を録音する一方,「祭り」は録音しない指揮者も多く,その例としてはカラヤン,ライナー,アンセルメなどですが,最近では「ローマ三部作」で一枚のCDに収録することが多くなりました。

 なお,4つの祭りとは,「チルチェンセス」「五十年祭」「十月祭」「主顕祭(公現祭)」です。

【推薦盤】
 「ローマの祭り」は,以前まではトスカニーニを一番に推薦していたところですが,素晴らしいライヴ録音が2つ登場しましたので,そちらをセレクトしたいと思います。

  ローマ三部作で一番最近に入手した音源で,大熱演のバッティストーニ=東京フィルの2013年ライヴです。
 この曲でライヴ録音をセレクトするのは怖いのですが,見事な演奏です。
 バッティストーニは87年生まれの若手指揮者で,オペラ指揮者としてキャリアをスタートさせたようですが,そのことからも曲の全体を見回して演奏するタイプの指揮者のようです(ティーレマンと同様のタイプか)。
 東京フィルの定期演奏会に登場し,地元イタリアのローマ三部作を演奏したのですが,3曲ともに凄まじい演奏を披露しており,中でも「ローマの祭り」,さらにはその4曲目の主顕祭は凄演となっております。
 陽気なイタリアのノリノリの演奏で,イケイケドンドン的な勢いがあり,テンポも基本的には速いのですが自在で,若さを全面的に出した演奏に驚愕してしまいました。
 正に「興奮のるつぼ」で,曲の終了後に拍手が入っているのですが,その演奏の凄まじさからか,聴衆が唖然として拍手が出てこない感じです。
 タイプとしては後記のサッカーニのライヴと同じ部類に入ります。

 また,東京フィルの演奏も大健闘で,普段のふぬけの演奏はどこへ行ったのかと思うほど,前のめりの演奏を披露しております。
 主顕祭も大爆発しながらも,その速めのテンポにオーケストラが乱れず(トロンボーン・ソロが弱いのが玉に瑕),後記の東京都響よりも演奏の質は上かもしれません。
 オーケストラの統制がギリギリのところで保たれている,土俵際的な演奏です(主顕祭のトランペットは若干遅れ気味か)。
 元気をもらいたいときには,是非,この演奏を聴くことをお薦めします。
 聴いた後には,大汗を書くこと間違いなしで,風邪もぶっ飛んでしまうでしょう。
 今後のこの指揮者に注目していきたいと思います。

 次に,サッカーニ=ブダペスト・フィルの91年ライヴです。
 「サッカーニ??? 知らないなぁ・・・」と思われると思いますが,私もこの指揮者は,この演奏で知ることとなりました。
 ブダペスト・フィルの一連のライヴ録音が(確か20枚程度出ていたと思います)発売されたときに,何故かこのCD(他にもベートーヴェンの交響曲第7番などを購入)に手が伸び,購入したのですが,その演奏内容が非常に素晴らしいものでした。
 個人的には,この三部作の中では「ローマの祭り」が一番好きなのですが,カタログでは一番録音が少ない曲でもあります。
 この曲の場合,主顕祭の出来がこの曲の評価を左右するものですが,この演奏はライヴであるにも関わらず,オケが乱れず,非常に速いテンポで進軍していき,大団円で曲を締めくくります。
 マイナーな指揮者とオケでも,これほどの演奏を残すとは,クラシックは奥深いです。

 「ローマの祭り」の推薦盤ですが,結構な数の推薦盤があります。
 と言うのも,そもそも曲の表現の手法により,様々な音楽の答えというものがありますが,この曲に限っては,好演に結びつく様々な答えがあるからだと思います。

 まずは,定番の49年のトスカニーニ=NBC響ですが,言うまでもなく彼のローマ三部作はフルトヴェングラーのバイロイト・ライヴの第九や,ワルターのコロンビア響との一連のスタジオ録音群などとともに,世界遺産的な演奏と言えます。
 特に主顕祭での曲の明瞭さは群を抜いており,圧倒的な名演と言えるでしょう。

 ノリの良さでは,バティス=ロイヤル・フィルの91年の録音も捨てがたいです。
 人気の廉価レーベルのNAXOSでは,この録音とカリンニコフの交響曲(クチャル指揮)のセールスがナンバー1だそうですが,それも納得できる演奏内容となっております。
 バティスのラテン的なノリが,この曲にピッタリとはまっており,録音も優秀でオケも大健闘しております。
  明るい「祭り」を楽しみたい方にお奨めしたい演奏です。

 スヴェトラーノフ=ロシア国立管の80年のライヴ演奏は凄まじいです,「ローマの噴水」同様に。
 ライヴならではの緊張感の中,やはり重戦車のような演奏を展開する,史上最大級の豪快な演奏となっております。
 金管の咆哮,地響きのような弦楽器,何を取っても圧倒的な名演です。
 このことから,テンポはかなり遅め(おそらく史上最遅)となっております。
 スピード感溢れる,颯爽とした演奏では,ムーティ=フィラデルフィア管(84年録音)でしょう。
 前半の3つの部分は,さわやかな感じもする演奏も,主顕祭に入ると,ムーティではあまり聴くことができない「力み」も混じり,ラストスパートの如く終演を迎えます。
 残念ながら,録音が今ひとつです・・・。

 ガッティ=ローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管(96年録音)も挙げておきましょう。  
 ムーティ同様に一般的にお奨めできる演奏内容で,スタイル的にもムーティに近いのですが,前半の3つの部分についてはムーティよりも色濃い演奏となっており,その濃さを主顕祭で爆発させるという回答をしている,ある意味では模範的な演奏とも言えます。

 最後に,日本人を代表して,山田一雄=東京都響の89年ライヴを挙げておきましょう。
 この曲のイメージにピッタリとくる日本人指揮者と言えば,やはり山田ということになりますが,さて演奏というと予想どおりの内容で満足しております。
 リズムのアタック感が尋常ではなく,特に主顕祭では爆発しております。
 主顕祭の最後,金管が若干弱いもののその後の最後の3連打はどの演奏と比較しても最も強烈で,聴衆も曲も正に狂喜乱舞。
 ライヴという一発勝負でありながら,山田のタクトに応えている東京都響の立派さに脱帽です。