クラシックにくびったけ  
     

G・ロッシーニ
 
歌劇「セビリアの理髪師」より序曲

【特選】
  指揮:アルトゥーロ・トスカニーニ
  演奏:NBC交響楽団
  録音:1945年

【推薦①】
  指揮:ネヴィル・マリナー
  演奏:アカデミー室内管弦楽団
  録音:1976年

【推薦②】
  指揮:クラウディオ・アバド
  演奏:ヨーロッパ室内管弦楽団
  録音:1991年

【推薦③】
  指揮:ロジャー・ノリントン
  演奏:ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
  録音:1990年

【推薦④】
  指揮:フリッツ・ライナー
  演奏:シカゴ交響楽団
  録音:1958年

【推薦⑤】
  指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
  演奏:フィルハーモニア管弦楽団
  録音:1959年

【推薦⑥】
  指揮:リッカルト・シャイー
  演奏:ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
  録音:1995年

【解説】
 歌劇「セビリアの理髪師」の序曲ですが,この序曲は単独で演奏されることも多いですが,元来は歌劇「パルミーラのアウレリアーノ」の序曲として書かれたものであります。

  ロッシーニはこれを歌劇「イングランドの女王エリザベッタ」に手を加えて用い,さらに歌劇「セビリアの理髪師」でも再び同じ曲を用いています。

  「セビリアの理髪師」以外のオペラはあまり有名ではないため,序曲として演奏されるときには「セビリアの理髪師」として取り扱われているようです。

【推薦盤】
 この曲の本命は,トスカニーニ=NBC響の45年の録音を選びたいです。
 トスカニーニのイタリア物も定評のあるところでありますが,ロッシーニの序曲集でもその相性の良さが表れております。
 この曲などは,むしろ直線的なアプローチの方がしっくり来る気がしますし,その点からも贅肉をそいだトスカニーニの演奏はピッタリです。

 76年録音のマリナー=アカデミー室内管ですが,機動力のある室内オケをフルに活用し,劇的な演出で成功している例です。
 ロッシーニの序曲はどの演奏も刺激が多いのが特徴で,中でも「ウィリアム・テル」「セビリアの理髪師」の序曲は内容が素晴らしいです。

 同じ室内オケでは,91年録音のアバド=ヨーロッパ室内管も,マリナーほどではないにしろ,刺激が少なくない好演です。
 アバドはロンドン響とも録音しておりますが,こちらはヨーロッパ室内管よりも刺激が多い演奏となっているものの,オケが大編成なので,多少その辺が足を引っ張っている感じがします。

  室内オケかつ古楽器演奏では,マリナーをも上回る,非常に劇的・刺激的な演奏を披露しているのが,90年録音のノリントン=ロンドン・クラシカル・プレイヤーズです。
 独特の「ため」といい,えげつないロッシーニ・クレッシェンドといい,飽きさせない演奏内容です。

 直線的な演奏といえば,58年の録音のライナー=シカゴ響も良いでしょう。
 このころのシカゴ響は,パワーといい,機能性といい,世界一のスーパーオケと言えるのではないでしょうか。
 それを弾き出すためには,ライナーのような表現の演奏が効果的であったと言わざるを得ません。

 味わいのある演奏でありながら,時折見せる激しさが特徴なのが,ジュリーニ=フィルハーモニア管の59年の録音です。
 ジュリーニと言えば,晩年の粘り気のある演奏(ベートーヴェンやブラームス,ブルックナー,ドヴォルザークなどによく見られる)が印象的ですが,若かりし頃のこの演奏は,ジュリーニの激情が垣間見ることのできる,貴重な記録としても意味のある音源でしょう。

 比較的最近の録音で挙げるとなると,シャイーの演奏(録音は95年)ということになります。
 彼は,ロッシーニの序曲集を2回(ナショナル・フィルとスカラ座フィル)録音しておりますが,いずれも素晴らしい演奏内容となっておりますが,私個人としては新盤のスカラ座・フィルの方を好みます。
 上記のような演奏を聴いていますと,ゴージャスなカラヤンの演奏などは,豪華さだけの飾り物の演奏に聞こえてしまいます。