クラシックにくびったけ  
     

A・スクリャービン
 

交響曲第4番作品54「法悦の詩」

 【特選】
   指揮:レオポルト・ストコフスキー
   演奏:ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
   録音:1968年ライヴ
 【推薦①】
   指揮:エフゲニー・ムラヴィンスキー
   演奏:ソヴィエト国立交響楽団
   録音:1959年ライヴ
 【推薦②】
   指揮:エフゲニー・スヴェトラーノフ
   演奏:ソヴィエト国立交響楽団
   録音:1977年ライヴ
 【推薦③】
   指揮:ヴァレリー・ゲルギエフ
   演奏:サンクトペテルブルク・キーロフ・マリンスキー劇場管弦楽団
   録音:1999年


【解説】
 この曲は,スクリャービンが神秘主義に傾倒した後期の代表作であります。
 原題はフランス語で,Le Poeme de l’extaseとされており,日本語では「法悦の詩」というように訳されておりますが,英語名のThe Poem of Ecstasyと書くとこれが意訳であることがわかるとおもいます。
 つまりエクスタシーということで,性的な絶頂を表しているわけでありますが,その他に宗教的な悦びを表すもの,またその両方という解釈があります。
 曲は,オルガン,ハープ,チェレスタのほか,バスドラム,タムタム,鐘,グロッケンシュピールなどを含めた大オーケストラによる単一楽章の楽曲で,自由な形式の交響詩とみなされたこともありましたが,ソナタ形式で書かれている点などからも,単一楽章の交響曲というのが定説です。
 また,これ以前のスクリャービンの3つの交響曲とは違い,決まった調性を有しておらず,神秘主義への傾倒による神秘和音を完成させた曲であります。
 なお,単一楽章からなる交響曲は,この曲の他に,モーツァルトの交響曲第32番,シベリウスの交響曲第7番,ハチャトゥリアンの交響曲第3番「シンフォニー・ポエム」などがあります。

【推薦盤】
 この曲については,やはり大編成オーケストラの魅力たっぷりの演奏を好みますので,その観点からストコフスキー=ニュー・フィルハーモニア管の68年ライヴを特選盤としたいと思います。
 いつものストコフスキーですと,曲を改編するなどしてエンターテイナーぶりを発揮するところでありましょうが,曲が曲だけに,始めから少々いかれている作品でもありますことから,意外とまともな演奏となっております。
 しかしながらさすがにストコフスキーはただでは終わらず,オーケストラの鳴りっぷりが凄まじく,散った移管溢れる演奏となっております。

 次に推薦盤ですが,演奏だけでは特選盤でも良いと思われます,ムラヴィンスキー=ソヴィエト国立響の59年ライヴをお薦めしましょう。
 まず,オーケストラが手兵のレニングラード・フィルではないのが不思議なのですが,指揮者も違えばオーケストラも変わり,レニングラード・フィルと同様に切れ味鋭い爆演となっております。
 ただ,残念ながらモノラル録音で音質に問題があり,せっかくの名演奏もこの録音では魅力が半減しております(ステレオ録音でしたら特選盤です)。

 次に,スヴェトラーノフ=ソヴィエト国立響の77年ライヴをお薦めしましょう。
 上述のムラヴィンスキーと同じ,今度はスヴェトラーノフの手兵でありますソヴィエト国立響でありますが,ムラヴィンスキーとは違い,切れ味よりも重戦車のような大スペクタクル的演奏となっており,やはり指揮者が違えば同じオーケストラでも鳴り方が違います。

 最後に,ゲルギエフの旧盤,サンクトペテルブルク・キーロフ・マリンスキー劇場管との99年の録音をお薦めしましょう。
 相変わらずゲルギエフのロシアものは非常に濃い演奏となっており,陰影が深く,ラストはど派手にやってくれております。
 録音も,この曲の所有盤の中で最も優秀な部類に入ります。