交響詩「ティル・オレインシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28
【特選】 指揮:クレメンス・クラウス 演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 録音:1950年
【推薦①】 指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー 演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 録音:1954年
【推薦②】 指揮:ジョージ・セル 演奏:クリーヴランド管弦楽団 録音:1957年
【解説】 この曲は,14世紀の北ドイツの伝説の奇人ティル・オイレンシュピーゲルの物語を,シュトラウスの巧みな管弦楽法で音楽化した作品です。 シュトラウスは,交響詩「死と変容」の完成後,オペラ作品に取り組んでいましたが,その歌劇の初演が失敗に終わってしまったことから,歌劇の作曲を一時期諦め,その後に書いたのがこの曲です。 曲の内容は,交響詩らしく情景を描いた作品で,ティルのテーマがあるのはもとより,ティルの笑いをクラリネットで表現するなど,非常に巧みに書かれている作品で,それらをいかに表現するかが,演奏の善し悪しを決めることとなります。
【推薦盤】 R・シュトラウスを得意としている指揮者と言えば,最近の指揮者ではあまり思い浮かばないですけれど,古くはクラウスや,その後はライナー,ケンペなどが挙げられますが,この曲の本命と言えば,クラウス=ウィーン・フィル(50年録音)ということになります。 クラウスは残念ながらモノラル期の指揮者で,ステレオ録音は1つも残しておりません。 この演奏も,モノラルですが,スタジオ録音ということもあり,当時の録音としては比較的聴きやすい部類に入りますが,演奏内容は素晴らしいの一言。 この指揮者が残した録音は,いわゆる「当たり」が多く,有名なウィンナ・ワルツはもとより,R・シュトラウスの一連の録音,ハイドンの交響曲第88番,シューベルトの「グレイト」など,録音は多く残っておりませんが,充実しております。 この曲の推薦盤として,まず,フルトヴェングラー=ウィーン・フィル(54年録音)を挙げさせていただきます。 30年のベルリン・フィルの演奏もありますが,録音が聴くに堪えません。 54年のウィーン・フィルとの演奏は,スタジオ録音であり,フルトヴェングラーの音源の中でもモーツァルトの交響曲第40番やハイドンの交響曲第94番「驚愕」などと並んで,非常に良い部類の録音であります。 この録音ですが,CDで販売されているモノラルのものと,昔にLPで購入した疑似ステレオのものとがありますが,今回聴き直してみると,明らかにLPから起こした疑似ステレオ盤の録音が良かったです。 当時,疑似ステレオには若干の抵抗を持っておりましたが,LP自体の音がよいせいか,圧倒的にCDよりも情報量が多いです。 演奏内容も,フルトヴェングラーらしいロマンティックかつ深い演奏となっており,クラウスの同曲と甲乙付けがたいです。
次に,セル=クリーヴランド管(57年録音)ですが,「死と変容」と同様に,ステレオ時代では最高の演奏と言えましょう。 決して個性的な演奏と言えるわけではありませんが,非常に丁寧でありながら推進力も備えている演奏です。 それにしても,現役指揮者にもシュトラウスを聴かせられるのはいないのですかねぇ・・・。 その他の演奏として,ケンペ=ドレスデン国立歌劇場管やマゼール=クリーヴランド管の演奏も悪くありません。