クラシックにくびったけ  
     

R・シュトラウス
 
交響詩「死と変容」作品24

【特選】
  指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ
  演奏:パリ音楽院管弦楽団
  録音:1956年

【推薦①】
  指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ
  演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音:1958年ライヴ

【推薦②】
  指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ
  演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音:1962年ライヴ

【推薦③】
  指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
  演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音:1950年

【推薦④】
  指揮:ウィレム・メンゲルベルク
  演奏:アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
  録音:1942年

【推薦⑤】
  指揮:ジョージ・セル
  演奏:クリーヴランド管弦楽団
  録音:1957年

   

【解説】
 
 交響詩「死と変容」ですが,R・シュトラウスが作曲した3曲目の交響詩で,指揮者・作曲家として注目され始めたころの作品です。

  シュトラウスは元来病弱で,20歳を過ぎても,たびたび死に直面することもあったとのことで,R・シュトラウス自身の当時の心境を作品にしたとされております。

  曲全体は序奏付きのソナタ形式で書かれており,非常に充実した内容の作品で,この曲以降のR・シュトラウスの曲の充実ぶりを考えると,大きな契機となった作品と言えるのではないでしょうか。

【推薦盤】
 「死と変容」の名演と言えば,クナッパーツブッシュで決まりです。
 クナッパーツブッシュは好んでこの曲を演奏していたようで,私が所有しているだけでも3種類の音源があります。
 そのいずれもがお奨めできますが,1つ選ぶとすると,56年のパリ音楽院管との演奏を挙げたいと思います。
 いずれの演奏も,クナッパーツブッシュらしい自由奔放かつ巨大な曲づくりとなっておりますが,パリ音楽院管の演奏は,モノラルでありながらスタジオ録音ということもあってか,音質も悪くなく,共演し慣れているウィーン・フィル(58年と62年のともにライヴ)と違い,緊張感が曲に表れていながらも,パリ音楽院管らしいマイルドな音を引き出しております。
 この曲は,クナッパーツブッシュを本命としておりますが,対抗も古い録音が並びます。
 最近の指揮者,特に現役指揮者では,ある意味R・シュトラウスの名演はあまり聴いたことがありません。

 まずは,フルトヴェングラー=ウィーン・フィル(50年録音)から。
 フルトヴェングラーのイメージとしては,ベートーヴェン以降,ロマン派の作曲家を得意としている印象がありますが,R・シュトラウスの録音も結構残っており,中でも芸術性の高いこの曲は,フルトヴェングラーにピッタリの曲で,フルトヴェングラー・ワールド全開というべき演奏になっております。

 個性的な演奏としては,R・シュトラウスと親交があり,曲(交響詩「英雄の生涯」)も献呈されているメンゲルベルク=コンセルトヘボウ管(42年録音)の演奏も素晴らしいです。
 彼独特の計算し尽くされたテンポの揺れはこの曲でも健在で,深いポルタメントなどは絶品です。
 録音は残念ながら良くはないですが,スタジオ録音であることもあり,思ったほど気にならない程度です。
 クナッパーツブッシュ,フルトヴェングラー,メンゲルベルクのお三方が揃い組の「死と変容」です。

 モノラル録音ばかり挙げましたが,唯一のステレオ録音から,セル=クリーヴランド管(57年録音)を挙げておきましょう。
 とはいうものの,この演奏も録音は50年代ですので,決して新しい録音とは言えませんが,上記の3巨匠の演奏と比較すると,目新しさ満載のキビキビとした演奏となっております。
 数年前までは,一部の演奏を除き,セルやライナーは直線的で味気ない指揮者という印象を持っておりましたが,これはいわゆる「聴かず嫌い」であったことが判明するとともに,私自身の演奏の好みも変わったのかしら・・・。

 その他の演奏として,ケンペ=ドレスデン国立歌劇場管やマゼール=クリーヴランド管も悪くなく,プレヴィン=ウィーン・フィルも内容のある演奏を披露しております。