クラシックにくびったけ  
     

I・F・ストラヴィンスキー
 

バレエ「春の祭典」

【特選】
  指揮:ヴァレリー・ゲルギエフ
  演奏:サンクトペテルブルク・キーロフ・マリンスキー劇場管弦楽団
  録音:1999年

【推薦①】
  指揮:ピエール・モントゥ
  演奏:ボストン交響楽団
  録音:1951年

【推薦②】
  指揮:イゴール・マルケヴィチ
  演奏:フィルハーモニア管弦楽団
  録音:1959年

【推薦③】
  指揮:アンタル・ドラティ
  演奏:デトロイト交響楽団
  録音:1981年

【推薦④】
  指揮:ピエール・ブーレーズ
  演奏:クリーヴランド管弦楽団
  録音:1991年

   

【解説】
 ストラヴィンスキーの三大バレエ曲のうち,最も人気が高い「春の祭典」ですが,ディアギレフが率いるロシア・バレエ団のために作曲したバレエ音楽で,20世紀の近代音楽の傑作に挙げられる作品であり,複雑なリズム,不協和音に満ちていて,初演当時には怪我人も出る大騒動となったことで知られております。
 ここでも版が色々存在し,4手のピアノ版を含めると9つの版があります。
 現在,主に使用されるのは1967年版ですが,指揮者によって好みが分かれます。
 ストラヴィンスキーは,リハーサル中でさえ直す改訂魔でしたが,初演指揮者のモントゥは,最初の版が一番良いと苦言を呈したことは有名な逸話であります。
 全体は2部形式となっており,第1部は「大地の礼賛」,第2部は「生贄の儀式」となっております。

【推薦盤】
 ストラヴィンスキーの三大バレエ曲の中で,私自身も気に入っている「春の祭典」ですが,古くはマルケヴィチやドラティも良かったですが,最近,決定盤が出ました。
 ゲルギエフ=キーロフ管(99年録音)がそれで,彼独特の,非常に色濃い,泥臭い演奏であるとともに,強弱や緩急自在の演奏で,最後の最後で異常にテンポを落とすなど,聴き手を楽しませてくれる演奏です。
 キーロフ管の鳴りも非常に心地がよいです。
 ある意味,彼の演奏はバーンスタインの晩年のスタイルに似ているかも知れませんね。

 次に,この曲の初演者のモントゥ=ボストン響(51年録音)をお薦めしておきましょう。
 パリ音楽院管とのステレオ録音がありますが,演奏内容はモノラルながら断然ボストン響の方に軍配が上がります。
 モントゥらしい端正さを備えながら,「やるところはやる」的な演奏となっております。
 ステレオ録音でないのが玉に瑕。

 この曲を得意にしていた指揮者は数多くおりますが,その代表格がマルケヴィチです。
 音源は2種類所有しておりますが,面白いことにオーケストラが一緒のフィルハーモニア管(51年と59年録音)で,しかも同じCDのカップリングとなっております。
 双方とも,凄まじい演奏内容となっており,奇才マルケヴィチの面目躍如の演奏です。
 マルケヴィチは,60年と68年の2回の来日で,いずれも日本フィルとこの曲を演奏しており,後者は映像にも残されており,その演奏も凄まじいものであるとのこと。
 ゲルギエフの深く濃い演奏もお薦めしますが,マルケヴィチの凄まじい演奏も捨てがたいです。

 名盤誉れ高い演奏として,「ペトルーシュカ」同様に,ドラティ=デトロイト響(81年録音)があります。
 「ペトルーシュカ」もそうでしたが,この録音の発売当時,優秀な録音も相まって,大変話題になった演奏ですが,演奏を聴くとやはり納得してしまいます。
 推進力のある非常にテンポが心地よい演奏となっておりま,ドラティ渾身の演奏と言えるでしょう。

 最後に,ブーレーズ=クリーヴランド管(91年録音)の演奏をお薦めしましょう。
 私は,ブーレーズのこの曲の録音は1つし所有しておりませんが,3回の録音をしており,最初はフランス国立管,残り2回がいずれもクリーヴランド管です。
 クリーヴランド管との旧盤も非常に評価が高いようですが未聴です。
 新盤ですが,ブーレーズらしい各フレーズの生き生きした,そして厳しさを感じさせる名演となっております。