クラシックにくびったけ  
     

F・v・スッペ
 

劇付随音楽「詩人と農夫」より序曲

【特選】
 指揮:ゲオルグ・ショルティ
 演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音:1959年

【推薦①】
 指揮:レナード・バーンスタイン
 演奏:ニューヨーク・フィルハーモニック
 録音:1963年

【解説】
 この曲は,喜歌劇「軽騎兵」序曲と並んで,オーストリアの作曲家でありますスッペの数多いオペレッタ(喜歌劇)などの代表作で,非常に有名な曲であります。
 曲の内容は,いわゆる接続曲形式と呼ばれるもので,様々な旋律が数珠つなぎのように次々と登場し,まるで紙芝居を見ているような感じがします。
 冒頭のトランペットのファンファーレは,喜歌劇「軽騎兵」序曲の印象よりは薄いのですが,曲中に登場するチェロのソロが非常に印象的な曲で,終結部は強力にたたみかけるように終わります。
 スッペは,前述のとおり,数多くのオペレッタ(スッペはウィンナ・オペレッタの父と呼ばれている)を作曲しておりますが,現代ではほとんど演奏されることはなく,専ら序曲のみが単独でコンサートで演奏されることが多く,スッペ自身がオーストリア出身ということもあり,ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートでもたびたび演奏されます。
 ちなみにニュー・イヤー・コンサートにおけるスッペの序曲の演奏実績としては,喜歌劇「軽騎兵」(1997年・ムーティ,2013年・指揮:ウェルザー=メスト),喜歌劇「スペードの女王」(2017年・指揮:ドゥダメル),劇付随音楽(歌付笑劇)「ウィーンの朝・昼・晩」(1990年・指揮:メータ,2000年・指揮:ムーティ,2015年・指揮:メータ),喜歌劇「美しいガラテア」(1979年・指揮:ボスコフスキー)などがあります。
 スッペの序曲は,シュトラウスのそれと比較して,起伏を大きくとって豪快にオーケストラを鳴らす傾向にあり,いわゆる「爆演」を楽しむのに適した曲が多いのが特徴で,この曲も同様です。


【推薦盤】
 この曲は,音源もあまり多くないため,推薦できる演奏も2つと少ないです。

 そのような中で特選盤ですが,前述したとおり,この曲は「爆演」を楽しむことに適した曲ということで,ショルティ=ウィーン・フィルの59年の録音をお薦めしましょう。
 ショルティは,そもそも,スコア(楽譜)に忠実な指揮者でありますので,その演奏表現は結構薄っぺらいものが多く,例えば交響曲などでは,一部の曲(ハイドンの交響曲など)以外は,正直聴く気にもなりませんが,この曲では「爆演」をやってくれております。
 この曲が入っているCDは,他にスッペの,喜歌劇「スペードの女王」,劇付随音楽(歌付笑劇)「ウィーンの朝・昼・晩」,喜歌劇「軽騎兵」のそれぞれの序曲が入っておりますが,そのいずれもが「爆演」です。
 よくぞ,天下のウィーン・フィルをここまで引きずり回したと思います。
 テンポ設定は超快速,直線的な表現,抜群のオーケストラ・ドライヴ,自在のテンポの揺れ,どれをとっても飽きさせなく,鬱なときにこれらの演奏を聴くだけで気分がぶっ飛びます。
 非常にエネルギッシュで,パワー溢れる演奏で,ショルティの火花が散るような指揮棒が想像できます。
 爆演好きな方には,是非ともコレクションに入れていただきたい逸品です。

 次に,指揮者の中でも,カラヤンと並んでオールラウンダーであります,バーンスタイン=ニューヨーク・フィルの63年の録音をお薦めしましょう。
 バーンスタインの晩年の一連のDGのライヴ録音では,SONY時代(ニューヨーク・フィル)のテンポと比較して非常に遅くなっているのが特徴の1つで,逆に演奏は濃厚なものとなっており,一般的には私は晩年の演奏を好みますが,この曲の場合はそのスピード感やダイナミックな表現が合う曲なので,ニューヨーク・フィル時代の演奏がピッタリときます。
 非常に軽快なサウンドを聴かせてくれており,聴くだけで楽しめる内容でもあり,颯爽としたオーケストラ・ドライヴを堪能できます。