2008年6月29日放送 ☆☆☆☆
リムスキー=コルサコフ作曲
交響組曲「シェエラザード」作品35
ヴァイオリン:セルゲイ・レヴィーチン
指揮:ヴァレリー・ゲルギエフ
演奏:サンクトペテルブルク・マリンスキー劇場管弦楽団
2001年11月 スタジオ録音
<推薦評>
リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」に決定盤がとうとう出た。
出たと言っても数年前ではあるが,待ちに待ったCDの登場である。
指揮者のゲルギエフの新譜が「シェエラザード」と聞いたとき,「これはもしや」と思ったが,期待どおりの演奏であった。
この曲の特徴のひとつに,「シェエラザードの主題」が曲中に随所に現れるが,旋律自体は素晴らしいのであるが,平凡な演奏であると飽きが来てしまうという欠点を持っている。
少なくとも,ゲルギエフのこの演奏についてはそのようなことは全くなく,過去の演奏に比較できるものがない史上最高の演奏と言えよう。
演奏は全体を通じてダイナミックである。
例えば第1楽章は,冒頭のトロンボーンからテンポを落としながら強奏させ,その後も非常にゆっくりとしたテンポ設定を取りながらも演奏は力強い。
しかも,オーケストラの馬力には一種の余裕すらも感じさせるところは,マリンスキー劇場管の底力に恐れ入る。
また,全曲通じてであるが,ヴァイオリン・ソロが素晴らしい出来を示す。
また,他の楽器(木管楽器)のソロも抜群に良く,この曲の魅力を十分に伝えている。
そして強奏と弱奏のメリハリも効果的である。
そして,この曲においてゲルギエフが本領発揮するのが第4楽章である。
第1楽章とは対照的に速いテンポ設定を取るのだが,金管楽器の活躍は相変わらずで,この楽章のテーマが非常に分かりやすい演奏内容となっている。
特に難破のシーンでは,速かったテンポを十分に落とすなかで展開される音楽は壮大なものである。
金管の咆哮がありながらも,繊細な音楽となっていくところはゲルギエフらしさが十分に発揮されており,全曲通じての緊張感はスタジオ録音では到底考えられないほどである。
改めて書くが,この演奏を超えることができるCDは,今後現れないであろうし,もし現れたとしたらどのような演奏になるかも想像がつかない。
せっかくなので,この曲について,ゲルギエフ盤以外のお薦めのCDを録音年代順に列記しておく(あくまでも私見であるが)。
ニコライ・ゴロヴァーノフ指揮 ボリジョイ管弦楽団 1946年
ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1958年
レオポルト・ストコフスキー指揮 ロンドン交響楽団 1964年
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮 パリ管弦楽団 1974年