『シンガポールのはなし』

 少し古い話になりますが,今年(2009年)3月に,世界的な動物園のシンガポール動物園などを運営するWRSと旭山動物園が友好提携を行いました。締結式の当日は,私も観光プロモーションでシンガポールに滞在しており,その準備と運営のお手伝いをいたしました。

 私自身,シンガポールに訪問したのは一昨年に続いて2回目で,いずれもシンガポールに在住の旭川観光大使の上野秀行氏に大変お世話になりましたが,今回の両動物園の友好提携につきましては,上野氏の御尽力の賜物であります。

そこで,まずは上野氏の簡単な紹介を。

 上野氏は北海道北見市生まれで,小学校6年の時に旭川市へ転校,教育大学附属中学校を卒業するまで旭川に住まわれ,高校は函館,大学は東京へ,そして就職後は国内外で活躍され,その後に独立されてシンガポールに在住しており,会社を経営している傍ら,シンガポール国立南洋理工大学で客員教授を務め,さらには尺八の都山流の師範でもあります。ちなみに上野氏は,私の番組である「クラシックにくびったけ」にも,過去に出演いただいたことがあります(2007年8月19日放送)

 さて,その上野氏と旭川市との関わりは,直接には小・中学生の時の4年間のみということになりますが,御両親が旭川在住であり,旭川に帰って来られた際に,私の職場の上司から紹介をいただいたのがきっかけでした。

 その半年後,本市としては初めてのシンガポール観光プロモーションを一昨年実施したのですが,その際に上野氏から様々なことをレクチャーしていただき,帰国後観光大使の就任の打診をして,快諾いただいたわけです。

 近年,シンガポール在住の上野氏や上海在住の呉奇氏,台湾在住の大隅千晶氏など,海外在住の旭川観光大使の委嘱が相次いでおりますが,それぞれにお国柄に合わせたセールス展開がより必要になっている御時世に,現地在住ならではの様々なレクチャーやアドバイスをいただくことのほか,それぞれがお持ちの人脈を活用し効率的・効果的な観光誘致活動を行っており,それが本市の強みともなっております。

 その上野氏から,シンガポールのお国事情で面白い話を数多く聞きましたので,いくつか御紹介したいと思います。

 上野氏曰く,シンガポールは政府の力が非常に強い国とのことで,国民は政府に管理されている立場とのことです。また,効率性や利便性を極めて重視しているとのことで,車社会の現在において,次のような例を挙げておられました。

①「シンガポールでは,自動車を運転する際には必ず車載カード機を付けなければならず,それにより自分の自動車がどこを走っているのかが管理されるほか,ラッシュ時や渋滞が起きた場合は,そのカードから自動的に税金(通行料)が引かれてしまう。お金のない人は,空いている道路を選んで走ることにより,全体の交通量が分散しラッシュが緩和されるほか,民間の駐車場の駐車料金なども自動で支払われる」

②「シンガポールではラッシュ問題は非常に重要視されており,以前は自動車の輸入関税を多くかけることにより自動車の台数を制限していて,日本のカローラクラスで何と800万円していたが,現在は逆に関税を緩和して,政府は通行料で財政補填している」

 シンガポールは環境に非常に厳しい国というのは有名であり,唾やガム,タバコなどのポイ捨ては多額の罰金が取られます。最近,日本でも厳しくなってきた受動喫煙も同様で,レストラン(野外は除く)などの空間では,一切タバコを吸うことが法律で禁じられておりますし,ホテル内では,タバコを吸う場所は自分の部屋のみとなっています。ただ,この国の面白いところは,ポイ捨ては禁止となっていますが,メインストリートのオーチャード通りなどには公共用の灰皿が点在しており,これだけの灰皿があればポイ捨てはしないであろうという,逆転の発想にも驚かされます。