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チャイコフスキー作曲 |
<推薦評> 正直言って,第4楽章のみの評価は☆☆☆では低すぎるかもしれなく,☆☆☆☆でも良いでしょう・・・。 そのくらいすばらしい演奏家と言うよりも,むしろ凄まじい演奏と言えよう。 その点では,ムラヴィンスキー指揮のグリンカ作曲歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲に匹敵する程の凄まじさと言えるかと思う。 この交響曲第4番は,チャイコフスキーの自伝的な作品となっており,4つの楽章を通じて「運命との闘争から勝利へ」という基本テーマが貫かれている作品で,終楽章である第4楽章は大変迫力のある,今までためていた力を爆発させるような内容となっている。 ということは,当然迫力のある演奏をというものが基本となるわけであるが,その点では,ムラヴィンスキー指揮のレニングラード・フィルのスタジオ録音(DG)や,ショルティ指揮のシカゴ交響楽団の演奏が挙げられるが,その両者を凌駕した演奏がスヴェトラーノフのこの東京ライヴの録音である。 確かに,全体の曲構成では,前述のムラヴィンスキーの演奏は捨て難いが(ショルティは第4楽章の迫力のみで全体的には好きになれません),何事も印象度というのが重要で,第4楽章ではスヴェトラーノフが一枚上ということで,「スヴェトラーノフの終盤の猛攻でこのロシア人対決は,引き分け!」という感じがするのは私だけでしょうか。 スヴェトラーノフは,チャイコフスキーの全集を4度録音に残しているが,今回のは3度目の録音で,さらには全集としては唯一のライヴ録音。 この3年後に再度録音されたスタジオ録音では,やはり迫力が不足しており,さらにまとまりすぎている感もあり,スヴェトラーノフ節が潜めている感じがする。 さて,演奏内容であるが,まずもってスヴェトラーノフの特徴である「とてつもない重量感溢れる演奏で,オーケストラを大音量で豪快に鳴り渡らせ,怒涛の興奮を聴衆に与える」が顕著に表れている演奏であり,これ以上でもこれ以下でもない特徴的な演奏である。 特徴を端的にまとめると3点あるが,まず一つ目にはこれ以上ない程のエネルギーと力感を持ったソヴィエト国立交響楽団の出来映えのすばらしさが挙げられる。 東京のサントリーホールのライヴ録音なのだが,ホールいっぱいに響き渡るというより 二つ目には,猛烈スピードで激走する演奏スタイル。 これほど速い第4楽章は聴いたことがありません。 三つ目は,さらにその激走がラストスパートをかけること。 コーダ以降もスピードは衰えず,最後はアッチェレランド(だんだん速くすること)まで入れてしまい大団円,聴衆も茫然自失,大興奮,ブラヴォーの雨あられ。 これぞライヴでオーケストラを聴く醍醐味ではないかと思う見本的な演奏。 |